半焼けの居酒屋で暮らす女と戦争孤児、次第に心を寄せるふたり…塚本晋也最新作『ほかげ』予告編

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(C)2023 SHINYA TSUKAMOTO/KAIJYU THEATER

塚本監督「どうしても作らずにはおれなかった、祈りの映画」

第80回ヴェネチア国際映画祭オリゾンティ・コンペティション部門への正式出品が決定した塚本晋也監督の最新作『ほかげ』より、ポスタービジュアルと予告編を紹介する。

・塚本晋也監督が戦争を民衆の目線で描く最新作『ほかげ』、ヴェネチア国際映画祭に正式出品

『鉄男』(89年)でのセンセーショナルな劇場デビュー以後、世界中に熱狂的ファンを持ち、多くのクリエイターに影響を与えてきた塚本晋也。戦場の極限状況で変貌する人間を描いた『野火』(14年)、太平の世が揺らぎ始めた幕末を舞台に生と暴力の本質に迫った『斬、』(18年)、本作ではその流れを汲み、戦争を民衆の目線で描き、戦争に近づく現代の世相に問う。

主演は、2023年後期のNHK連続テレビ小説『ブギウギ』のヒロインに抜擢され、今最も活躍が期待されている俳優・趣里。孤独と喪失を纏いながらも、期せずして出会った戦争孤児との関係にほのかな光を見出す様を繊細かつ大胆に演じ、戦争に翻弄されたひとりの女を見事に表現した。

片腕が動かない謎の男を演じるのは、映像、舞台、ダンスとジャンルにとらわれない表現者である森山未來。飄々としながらも奥底に蠢く怒りや悲しみを、唯一無二の存在感で示している。

趣里が演じる、戦争で家族をなくし、焼け残った居酒屋で体を売って生きている女と交流を深めていく戦争孤児を『ラーゲリより愛を込めて』(22年)や大河ドラマ『青天を衝け』に出演している子役・塚尾桜雅。復員した若い兵士役に、PFFグランプリ受賞作品『J005311』(22年)の監督でもある河野宏紀。そして、映画監督、俳優としても活躍する利重剛、大森立嗣が脇を固める。

『ほかげ』

今回紹介するポスタービジュアルでは、半焼けの居酒屋で暮らす女と、片腕が動かない謎の男の姿が配され、空襲で家族を失った子どものまっすぐな眼差しが心に響く。

予告編は、盗んだ食べ物を持って居酒屋にやってきた子どもに「ここは、あんたの来る所じゃないんだよ」と吐き捨てる女のセリフから始まる。次第に心を寄せていくふたりの様子が窺えるが…。

ポスタービジュアル、予告編共に印象的なのは、浮かび上がる『ほかげ』のタイトルと、「戦争が、終わったんだ」というキャッチコピーだ。

塚本監督は本作について「火と、その揺れに合わせて姿を変える影。その影の中に生きる人々を見つめ、耳をすませます。終戦企画と銘打って準備撮影を進めた『ほかげ』。世界の動きが怪しくなってきた今、どうしても作らずにはおれなかった、祈りの映画になります」とコメントを寄せている。

人間の中に潜む暴力、分かち難く絡む死と生を描いてきた塚本監督が、終戦直後の闇市を舞台に、絶望と闇を抱えたまま混沌の中で生きる人々の姿をどのように描くのか。関心が高まるポスタービジュアルと予告編になっている。

『ほかげ』は11月25日より全国順次公開。

・『ほかげ』のポスタービジュアルはこちらから!

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