最下層の若者たちの怒りと悲しみ…世界が絶賛、魂を揺さぶる感動作に松本隆らが絶賛コメント
主演俳優ジャック・タンとジン・オング監督が劇場舞台挨拶のために来日決定
米アカデミー賞の国際長編映画賞にマレーシア代表に選出された映画『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』より、W主演のウー・カンレンとジャック・タン、ジン・オング監督からビデオメッセージが届いた。また、作詞家・松本隆、映画監督・橋口亮輔、映画監督・アン・リー、ジャーナリスト・金平茂紀ほか、ジャンルを超えた25名もの著名人の方々から称賛コメントが寄せられた。
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本作は、妻の死をきっかけに55歳でトランスジェンダーとして生きる主人公を描いた『ミス・アンディ」(20年)、シルヴィア・チャンが末娘の死で精神に異常をきたすシングルマザーを演じた『分貝人生(ShuttleLife)』など、社会派作品のプロデューサーとして国際的な評価を獲得してきたジン・オングが、初めて自ら監督・脚本を手掛けた長編デビュー作。アン・リー監督を尊敬しているというその言葉通り、登場人物たちの心理状態を静かに繊細に描きながらも、強固なメッセージを表出させる手法は、初監督作品とは思えない完成度を示している。
・『Brotherブラザー 富都(プドゥ)のふたり』の場面写真はこちらから!
マレーシア・クアラルンプールの富都(プドゥ)地区にある荒廃したスラム街。この地域には不法滞在者2世とも言える、様々な国籍・背景を持つ貧困層の人々が多く暮らしている。その場所で、身分証明書(ID)を与えられず、兄弟として成長してきた兄のアパンと弟のアディ。アパンは聾唖(ろうあ)というハンディを抱えながらも、市場の日雇いで堅実に生計を立てている。一方アディは、簡単に現金が手に入る裏社会と繋がっていて、彼の行動は常に危険を孕んでいる。そんなある日、アディの実父の所在が判明し、ID発行の可能性が出てきた。しかし、ある事件が2人の未来に重く暗い影をもたらす。
聾唖の兄アバンを演じたのは、台湾の人気俳優ウー・カンレン。彼がクライマックスで演じる声にならない魂の叫びは、観客の感情を大きく揺さぶるに違いない。その演技は高く評価され、台湾のアカデミー賞(金馬奨)で最優秀主演男優賞を獲得したのをはじめ、各映画祭・映画賞の演技賞を独占している。9月には中国の大手エージェントとの契約も発表され、今後の活躍が大いに期待されている。
無鉄砲な弟アディを演じた、マレーシアのスター俳優ジャック・タンは、社会から疎外された若者の行き場のない怒りと悲しみを等身大で演じ、彼もまた多くの助演男優賞をその手中に収めている。監督のジン・オングとは、彼のプロデュース作品の常連的存在で、公私にわたる親友関係でも知られている。劇中歌として使用されているテレサ・テンの名曲「千言萬語」を歌っているのは、タンの妻で歌手・女優・ラジオDJのユン・メイシンだ。
また、アバンとアディの育ての親として2人を子どもの頃からさまざまな形で支えてきたトランスジェンダーのマニーを演じたタン・キムワン、社会の底辺に生きる人々に寄り添い、献身的なサポートに尽力するジアエンを演じたセレーン・リム、アバンに報われることのない思募を寄せるミャンマー人シャオスーを演じたエイプリル・チャンなど、アバンとアディを支える俳優たちの抑制の効いた演技も、決して忘れることはできない。
今回、W主演のウー・カンレンとジャック・タン、ジン・オング監督からビデオメッセージが到着した。また、弟のアディを演じたジャック・タンとジン・オング監督の来日も決定。2人は初日を含む週末に、東京・神奈川などの映画館での舞台挨拶に登壇する予定だ。ウー・カンレンは現在中国本土で新作ドラマの撮影中で、今回は残念ながら訪日は叶わなかった。なお、ジン監督は先月12月にもプロモーションのために来日しており、今回は2回目の東京訪問となる。
さらに、ジャンルを超えた25名もの著名人の方々から本作への称賛コメントが寄せられた。ジャーナリストの金平茂紀は「これほどまでに心が揺さぶられるのは、私たちがすでに失ってしまった何かをみたからか」と語り、映画監督の橋口亮輔も「悲しみに呑まれるような体験をした」と感動の深さを表現した。作詞家の松本隆さんは、ポップスミュージックだけでなく「映画もアジアの時代なんだね」と、率直な心情を吐露したコメントを寄せている。
他にもアメリカで活躍する台湾人監督アン・リー、タイのバンジョン・ピサンタナクーン監督、ユニークなところでは、雨傘運動直後に行われた香港行政官選挙で、香港市民の支持を受けながらも中央の推薦を得られず敗れた、香港特別行政区元財政長のジョン・ツァンなど、ボーダレスな活躍で知られる人たちがその名を連ねている。
■金平茂紀(ジャーナリスト)
荒廃したスラム社会の底辺に生きる2人の兄弟。
そこから脱するための約束と無償の愛。
これほどまでに心が揺さぶられるのは、私たちがすでに失ってしまった何かをみたからか。
終盤に流れてきた歌で涙腺が決壊した。
■橋口亮輔(映画監督)
過酷な世界で生きる2人の兄弟の物語。
ウー・カンレン演じる聾啞の兄が、報われなかった人生を手話で語り出すワンカット。
声にならないその慟哭に圧倒される。
悲しみに呑まれるような体験をした。
■松本隆(作詞家)
マレーシアの光と影と原色。喋れない兄と怠惰な弟。言葉を持たない兄の最後の叫び。映画もアジアの時代なんだね。
■山本政志(映画監督)
底辺に生きる人間の魂の奥底から絞り出す主演ウー・カンレンの声にならない声は、ヌル~とした今を生きる私たちの喉元に突き付けられたサバイバルナイフだ。
■信濃八太郎(イラストレーター)
光が強ければそれだけ影も濃くなる。暗闇に安らぎを得て、明るい光の下では怯えて暮らすしかなかった兄弟が、それぞれ選んだ一瞬の判断。社会が照らさなければ、見えることすらない影があることを教えてくれた。
■梶原阿貴(脚本家・俳優)
私たちが暮らすこの国の片隅にも、アバンとアディはいる。
互いの額で割る玉子。自分よりも大切な誰かを守るために必死に生きる彼らを、私たちは見て見ぬふりをすることができるのか。
■信國大志(歌うテイラー)
ここに生きる人たちは悲しみを越えて強い。
■ヴィヴィアン佐藤(美術家・ドラァグクイーン)
血縁ではないふたりの青年たちが主役だが、親代わりのトランスジェンダーのマニーの存在が実に大きい。深い愛で結ばれているこの擬似家族は、家族の意味を問いかける。また近代国家とは? アイデンティティとは? 世界中でその定義が揺らいでいる現在、我々含めすべての人間は亡命者である。
■サエキけんぞう(ミュージシャン)
マレーシアを舞台に「ああ、若者って、こんな風に苦闘して生きている存在だったよな」と、その鮮烈な生命感に感銘を受ける快作。
■尚玄(俳優)
2人の兄弟愛が終始涙を誘う素晴らしい作品。
■アン・リー(監督/アメリカ・台湾)
ウー・カンレンのような俳優が台湾にいる事をとても誇りに思う。
彼はどんな役にもなれる素晴らしい俳優だ。
そしてジン・オング監督の誠実で繊細な演出にも感動させられた。彼はまさにGreatDirectorだ!
■JJLin/林俊傑(音楽家/シンガポール)
この映画に感謝します。この作品は、人間がいかに脆弱であるか、そしてその脆さの中にいかに強さを秘めているかを教えてくれました。
「生きているのなら、今をしっかり生きよう…」
■ジョン・ツァン/曽俊華(香港特別行政区元財政長官)
この映画は兄弟がどんなに不公平な状況や残酷な世界の中にあっても、愛し合い、互いに支え合い、勇気を持って困難に立ち向かう姿を描いている。それは今もなおこの地で生きる、あるいは同じ境遇にある全ての人々に対して、力強い啓示を与えてくれるに違いない。
■トンタット・アン/尊室安(音楽家/ベトナム・フランス)
弟が耳が聞こえない兄にダンスを教える場面は、非常に優しく、輝きと官能性に満ちた純粋な映画的瞬間であり、愛が無限の形で完全に表現される魔法のような時間を表現している。
■バンジョン・ピサンタナクーン(監督/タイ)
この映画が大好き。まるで赤ちゃんのように泣いてしまったよ!
■伊藤操(ジャーナリスト/ライフコーディネーター/元ハーパスバザー編集長)
こんなにも過酷な環境下で、こんなにも素晴らしい兄弟愛が生まれるのは奇跡だ。
聾唖の兄と無鉄砲な弟を通して、私たちは言葉以外、そして言葉以上の交流が生まれる瞬間の目撃者になる!
■石津文子(映画評論家)
自分はどうして、“ここ“に生まれたのか——。兄の問いに誰が答えられるだろう。自分の存在を証明出来ずに生きることの困難さ。社会の一員になれない辛さ。彼の存在証明は弟への愛しかない。ウー・カンレンの真っ直ぐな瞳が痛い。
■池田リリィ茜藍(会議通訳・日中翻訳家)
真のグローバル社会とは何か。本作は国籍を含む身分証明というものが、個人の拠り所を定義しうるかという疑問、そして法や制度の狭間に生きる苦悩は全く単純ではないことを、私たちに投げかけている。
■児玉美月(映画文筆家)
“家族”として生きてきたふたりの男たちが過酷な状況下で交わす、束の間の抱擁。
そこに発露されるのは、どんな言葉をもってしても形容しようのない親密性にほかならない。
来世ではなく今世で、彼らのように社会から零れ落ちた者たちが幸せを享受するために、わたしたちに何ができるだろう。
■杉谷伸子(映画コラムニスト)
とてつもない慟哭の先に待つ感情を、抱きしめずにいられない。ジン・オングの洗練の映画文法とウー・カンレンの繊細な演技で、きっとあなたにも「2025年最も泣いた映画」になる。
■高橋正明(デザイン・ジャーナリスト)
華やかな国際都市・クアラルンプールの陰には国籍なき人たちの住む無法地帯がある。
国から見捨てられた人々の悲惨と怒りが目に焼き付く。これは日本の未来の姿かもしれない。
■立田敦子(映画ジャーナリスト)
貧困、不法移民、人権などの問題が複雑かつ多層的に絡み合う現代社会のブラックスポットに堕ちたIDのない兄弟の困難は、私たちの胸を抉った『存在のない子どもたち』の“その後”を彷彿とさせる。
それでもこの映画に通底する優しさは、愛は人を救えるという祈りのような希望を抱かせる。
■夏目深雪(映画批評家)
「運命の2人」というテーゼを『ブエノスアイレス』から引き継いでいるこの映画は、「血の繋がり」にも「性愛」にも行き着かない今までにない道を選ぶ。観客は見終わってから2人の名が並んだ原題、そして『Brother』という邦題を噛みしめるしかない。
■東紗友美(映画ソムリエ)
スラムの雑踏と絶望の中から生まれてきた天使たち。
君を包む光になりたい、という兄弟の想いは優しくも痛烈である。
ここで描かれているのは、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』のような崇高な魂と『ライフ・イズ・ビューティフル』のような献身的な愛。
彼らに課せられた余りの過酷な現実に、私たちはただの傍観者でいて良いのだろうか?
これは監督が私たちに突きつけた挑戦状でもあると感じた。
■真魚八重子(映画評論家)
クアラルンプールの鮮やかな色彩と、市場やストリートのむせるような香りが映画から溢れ返る。義兄弟の切ない物語は思いがけないミステリーの要素をはらんで、切ない最果てに流れ着く。美しい傑作!
『Brotherブラザー 富都のふたり』は1月31日より劇場公開。
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