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『ミステリアス・スキン』
『ミステリアス・スキン』
『ミステリアス・スキン』
『ミステリアス・スキン』

グレッグ・アラキ監督による劇場未公開の傑作が公開決定

幼少期の性被害によって人生を大きく変えられた2人の少年の行く末を描き、世界各国の映画祭で大きな反響を呼んだ映画『Mysterious Skin』(04年)が、邦題『ミステリアス・スキン』として公開されることが決定した。本作よりポスタービジュアル、予告編、場面写真、グレッグ・アラキ監督のコメントを紹介する。

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90年代“ニュー・クィア・シネマ”のムーブメントを牽引し、つねに時代の遥か先を見据えてきたグレッグ・アラキ監督による本作は、第61回ヴェネチア国際映画祭(04年)でのプレミア上映を皮切りに、トロント、サンダンス、ロッテルダム映画祭などでも上映され、世界中で大きな反響を呼んだ。原作は、スコット・ハイムが1995年に発表し、かのウィリアム・バロウズにも絶賛された同名小説。日本では「謎めいた肌」として2006年にハーパーコリンズ・ジャパンより刊行された。

・『ミステリアス・スキン』のポスタービジュアルはこちら

カンザス州の田舎町ハッチンソン。1981年の夏、リトルリーグのチームメイトである8歳の少年ブライアン(ブラディ・コーベット)とニール(ジョセフ・ゴードン=レヴィット)は、幼い子どもへの性加害を常習的に行なっていた一人の“コーチ”(ビル・セイジ)によって大きく人生を狂わされる。

精神的ショックから記憶を失い、後遺症にさいなまれる日々を過ごしていたブライアンは、やがて自分は宇宙人に誘拐されたために記憶を失ったのだと思い込むように。一方 “コーチ”と8歳の自分の間にあったものは「愛」だと信じていたニールは、彼の影を追い求めて年上の男たちを相手に身体を売りながら生きる道を選んだ。

「空白の記憶」から10年——ブライアンが真実を取り戻そうとするうち、手がかりとして浮かび上がってきたのは繰り返し夢に現れる一人の少年。そして、その少年がニールであることをついに突き止めたブライアンだったが、すでに彼はニューヨークへと旅立ったあとだった…。

W主演を務めるのは、ゴールデングローブ賞主演男優賞を受賞した『(500)日のサマー』(09年)などで知られ、本作撮影時は23歳でブレイク前だったジョセフ・ゴードン=レヴィット。そして、現在は『ブルータリスト』(24年)『シークレット・オブ・モンスター』(16年)などの監督として世界に名を轟かせるブラディ・コーベット。全身全霊を注ぎ、チャレンジングな役柄に果敢に臨んだ。

さらに、2月26日に惜しくも他界したミシェル・トラクテンバーグ、メアリー・リン・ライスカブ、エリザベス・シューなど、人気を博する実力派俳優たちが脇を固めている。製作から20年——世界中でグレッグ・アラキの再評価が高まるなか、いま見られるべき傑作が初の全国ロードショーを迎える。

『ミステリアス・スキン』

今回紹介するのは、ブルーとピンクのノスタルジックな淡い色合いが印象的な両A面のポスタービジュアル。ブルーのビジュアルはブラディ・コーベット扮するブライアン、そしてピンクのビジュアルはジョセフ・ゴードン=レヴィット扮するニールの、それぞれアップの表情を切り取ったもの。

精神的ショックでトラウマを抱え、性被害の体験を”思い出せない“ブライアン。その一方、特別な「愛」の思い出として、性被害の体験が“忘れられない”ニール。ひと夏の出来事により、その後の人生が大きく変わってしまった対照的な2人の少年、その表裏一体の姿を表現したデザインとなっている。

あわせて紹介する予告編は、今年2月に行われたオーケストラ・セットでの来日公演の興奮冷めやらぬアイスランドの至宝シガー・ロスによる劇中曲「Samskeyti」が忘れがたい余韻を残す。

オリジナル劇伴を手掛けるのは、ハロルド・バッド&ロビン・ガスリー。ハロルド・バッドは、ブライアン・イーノやコクトー・ツインズ(エリザベス・フレイザーとロビン・ガスリーによるユニット)とのコラボレーションでも有名なアンビエント・ミュージック界の巨匠で、2020年に新型コロナによる合併症のため他界した。その他にもスロウダイヴ、カーヴ、ライドなど浮遊感のあるシューゲイザー・サウンドが彩りを添えている。

グレッグ・アラキ監督は、本作の魅力について「人生のうち、何年かを費やして映画にしたいと思えるほどの情熱と興奮を覚えたのは、この作品に出会ったときだけでした。ずっと起きてきたのに決して語られることのなかった関係性や出来事が露になり、読者は心をかき乱されつつも惹きつけられてしまいます」と表現する。

映画化にあたっては、「こうした極めて不穏な場面に背を向けてしまうのであれば作る意味がないと思いました。それでは原作の持つ特別な力や、心を引き裂くような衝撃が失われてしまうからです。この物語は人々に気づきをもたらす、語られるべき話であり、それを途中で目をそらせない“映画”という形で見るのは強烈な体験になるでしょう。私としては、『ミステリアス・スキン』が見た人に変化を起こし、タブーへの沈黙を破るきっかけになることを願います」とその決意を明かす。

自身の実体験をもとに小説を著した原作者スコット・ハイム自身も「これ以上の映画化はない」と太鼓判を押す、最良の実写版を作り上げた。

■グレッグ・アラキ監督

人生のうち、何年かを費やして映画にしたいと思えるほどの情熱と興奮を覚えたのは、この作品に出会ったときだけでした。ずっと起きてきたのに決して語られることのなかった関係性や出来事が露になり、読者は心をかき乱されつつも惹きつけられてしまいます。もし映画化でこうした極めて不穏な場面に背を向けてしまうのであれば作る意味がないと思いました。それでは原作の持つ特別な力や、心を引き裂くような衝撃が失われてしまうからです。この物語は人々に気づきをもたらす、語られるべき話であり、それを途中で目をそらせない“映画”という形で見るのは強烈な体験になるでしょう。私としては、『ミステリアス・スキン』が見た人に変化を起こし、タブーへの沈黙を破るきっかけになることを願います。本作のエンディングには、個人的に魔法のようなものを感じます。光と影が絶妙な塩梅で共存していると感じるんです。嘘くさいハッピーエンドではありませんが、完全に絶望しかないわけでもなく、一筋の希望が見えます。見たあとには、私が真に望んだのはどちらなのかという疑問が残るでしょう。

『ミステリアス・スキン』は4月25日より全国公開。

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