震災後の陸前高田、あるラジオ・パーソナリティの物語
『息の跡』の小森はるか監督最新作『空に聞く』が2020年11月21日より公開。かつての町の上に、新しい町が作られていく。震災後の陸前高田で、いくつもの声を届けたあるラジオ・パーソナリティの物語。
東日本大震災の後、約三年半にわたり「陸前高田災害FM」のパーソナリティを務めた阿部裕美さん。地域の人びとの記憶や思いに寄り添い、いくつもの声をラジオを通じて届ける日々を、キャメラは親密な距離で記録した。津波で流された町の再建は着々と進み、嵩上げされた台地に新しい町が造成されていく光景が幾重にも折り重なっていく。失われていく何かと、これから出会う何か。時間が流れ、阿部さんは言う————忘れたとかじゃなくて、ちょっと前を見るようになった。
監督は、震災後のボランティアをきっかけに東北に移り住み、刻一刻と変化する町の風景と出会った人びとの営みを記録してきた映像作家の小森はるか。傑作『息の跡』と並行して撮影が行われた本作は、映像表現の新たな可能性を切り拓くことを目的としたプロジェクト「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」*として完成。あいちトリエンナーレ、山形国際ドキュメンタリー映画祭、恵比寿映像祭と立て続けに上映され、先鋭的なプログラムの中でもひときわ大きな反響を呼んだ。
*愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品
映像における身体とは何かを追求すべく、映像作家のみならず美術家や舞台の演出家など、様々なジャンルの作家を選出し、実験的な映像作品を制作するプロジェクト。1992年に開始され、2014年より「愛知芸術文化センター・愛知県美術館オリジナル映像作品」に名称変更。これまでにダニエル・シュミット監督『KAZUOOHNO』(95年)、キドラット・タヒミック監督『フィリピンふんどし 日本の夏』(96年)、三宅唱監督『THECOCKPIT』(14年)
映画『空に聞く』は2020年11月21日公開
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