1960年代の沖縄、明らかになる日本国家の罪
日本には精神障害者を隔離する制度があった。法律に基づく「私宅監置」。私宅監置という歴史の闇を明るみに出すドキュメンタリー映画『夜明け前のうた ~消された沖縄の障害者~』は2021年3月20日より東京K’scinema、4月3日より沖縄 桜坂劇場ほか全国順次。
沖縄に拠点をおき、この問題を追いかけ続けてきたフリーTVディレクター・原義和が初監督する渾身の本作。
私宅監置、それは1900年制定の精神病者監護法に基づき、精神障害者を小屋などに隔離した、かつての制度である。1950年に日本本土では禁止になったこの制度は、沖縄では「日本復帰」した1972年まで残った。隔離の犠牲者は人生を奪われ、尊厳を深く傷つけられたまま、「家族の恥」「地域の恥」、ひいては「日本の恥」として闇に葬られ、公的な調査や検証は行われていない。
本予告は、沖縄の美しい海とのどかな波音から始まる。一変して、薄暗い監置小屋が映し出され、「消された顔や名前、愛する人と引き裂かれ奪われた人生」というナレーションと共に、現存する小屋の寒々しい外観や、足場と窪みだけの仕切りもないトイレなどおよそ人が住み得ないような屋内が映し出され、そして並べられた数々の監置犠牲者の写真へと続く。1964年に東京から沖縄へ派遣された精神科医、岡庭武氏が記録したものである。残された写真を頼りに消息をたどっていく中で、犠牲者の家族の心情にも迫っていく。10数年にわたって私宅監置されていたある女性は、監置小屋の中でよく歌を歌っていたという。「打ち砕かれた犠牲者が決して手放さなかったもの、それは歌でした」と予告編映像は締められる。
歌を通して、彼女に一筋の救いの光が訪れていたことを願わずにはいられない、そんな映画である。
『夜明け前のうた ~消された沖縄の障害者~』は2021年3月20日公開
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