最新技術で70歳老優が違和感なく若返る! 巨匠監督の実験精神と美学
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【週末シネマ】『アイリッシュマン』
20世紀のアメリカに実在した殺し屋の物語
先だって、マーベル映画について「あれはシネマではない」と発言して物議を醸したマーティン・スコセッシ監督の最新作は、Netflixで配信中の『アイリッシュマン』だ。盟友ロバート・デ・ニーロ、ジョー・ペシと『カジノ』(95)以来24年ぶりに組み、さらに初めてアル・パチーノを起用した、20世紀のアメリカに実在した殺し屋の物語は50年以上もの年月を同じ俳優が演じ、219分というたっぷりした時間をかけて丁寧に描かれる大作だ。
デ・ニーロが演じる主人公フランク・シーランはアイルランド系(アイリッシュマン )で、兵士として第二次世界大戦を戦った後、トラック運転手の仕事に就いた。妻子と慎ましく暮らしていた彼に転機が訪れたのは、地元のフィラデルフィアでマフィアのブファリーノと知り合った時だ。彼に気に入られたシーランはブファリーノ・ファミリーの犯罪に手を貸す一方、全米トラック運転組合での地位を高めていき、組合委員長ジミー・ホッファの信頼も得る。カリスマ性あふれるホッファをパチーノが演じ、シーランの秘めたる可能性に最初に気づいて引き立てたブファリーノをペシが演じる。
デ・ニーロ同様スコセッシ監督作の常連だったペシは2010年を最後に俳優を引退していたが、久々の復帰作では、今まで見せたことのない静かなる大物の表情だ。他方、パチーノは強引な“信念の人”をエネルギッシュかつチャーミングに演じ、対照的な2人とデ・ニーロ演じる主人公は一種の三角関係を作り出す。
1940年代から2000年代まで、主要キャストは全ての年代を自身で演じている。メイクではなく、『スター・ウォーズ』シリーズなどで知られるILM(インタストリアル・ライト&マジック)社の特殊効果で70歳を過ぎたデ・ニーロたちがそのまま演じた表情を若返らせる手法は、名優たちの底力と最新技術のコンビネーションに賭けたスコセッシの実験精神を感じる。
各時代の情景を細かく再現し、史実にシーランの回想が絡まった物語は、男たちの信頼と裏切りを軸に、一歩下がった立場で彼らを見つめ続ける女たちの存在にも大きく意味を持たせ、自らの罪と向き合う老人の孤独にたどり着く。スコセッシと主要キャスト3人、さらにマフィアのボス役のハーヴェイ・カイテルを加えると彼らの平均年齢は77歳を超える。かつて血気盛んなギャング映画を作った彼らの、今だからこその演出と演技に枯れの美学を感じる。
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