対照的な兄弟の絆、同じ痛みを抱えた女性との恋
『舟を編む』で日本アカデミー賞監督賞を最年少で受賞、『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』でアジア・フィルム・アワード、最優秀監督賞を受賞し、その他にも『生きちゃった』『茜色に焼かれる』など数々の名作を発表し続けている石井裕也監督の最新作、『アジアの天使』が7月2日に公開される。この度、『兄弟編』『恋愛編』の2種類の特別映像が到着した。
・オダギリジョーが怪しい商売で池松壮亮を翻弄!? ソウル舞台のロードムービー
本作で主人公の青木剛を演じたのは『映画 夜空はいつでも最高密度の青色だ』『町田くんの世界』『ぼくたちの家族』など、石井監督作品には欠かせない顔である池松壮亮。剛が身を寄せることになる韓国在住の兄には、石井監督演出のTVドラマ「おかしの家」で主演をつとめたオダギリジョー。元アイドルで売れない歌手のソル役には『金子文子と朴烈』のチェ・ヒソが扮している。
8歳のひとり息子の学(佐藤凌)を持つ小説家の青木剛(池松)は、病気で妻を亡くし、喪失感を抱えたまま疎遠になっていた兄(オダギリジョー)が住むソウルへ渡った。ほとんど韓国語も話せない中、自由奔放な兄の言うがまま怪しい化粧品の輸入販売を手伝う羽目になる。元・人気アイドルのソル(ヒソ)は、自分の歌いたい歌を歌えずに悩んでいたが、亡くなった父母の代わりに、兄・ジョンウと喘息持ちの妹・ポムを養うため、細々と芸能活動を続けていた。ソウルから江原道(カンウォンド)へと向かう列車で偶然巡り合った2つの家族は、言葉が通じ合わないにもかかわらず、不思議な旅を共にすることになる。
本映像の『兄弟編』では、妻を失い深い悲しみと向き合ったからこそ、言葉や文化を超えて人と人が分かり合おうとすることをあきらめない剛と、剛とは対照的な、いい加減に見えてどこか憎めない飄々とした兄の透との息の合った掛け合いのシーンが映し出されている。
江陵に向かう電車の中で黙々と小説を書く剛と、暇を持て余したように剛の後部座席からパソコン画面をのぞき込みちょっかいを出し始める透。うんざりしている剛をよそに「うるさくてもお兄ちゃんは言うべきことは言うよ」「お前の小説全然売れないな、ていうかお前旅が好きだよな、だから韓国まで来たんだろ、いや違う、生活に困ってたのか」と軽快な弟イジリは止まらない。剛はたまらなくなり「お前マジ勘弁してくれ」と詰め寄るが、透は「お前って言うな、お兄ちゃんと言え」と、のらりくらりと適当にかわす様子が映し出されている。池松とオダギリが織りなす兄弟ならではの軽快なやりとりも本作の魅力のひとつだが、この旅を通して疎遠だった兄弟の絆も深まっていくのかという点にも注目だ。
『恋愛編』では、市場で泣いているソルをみかけた剛が、言葉が伝わらないことを知りながらソルをほっておけず、日本語で話しかける場面から始まる。「大丈夫ですか」と剛。ソルは剛に気づくが、自分を見ながら笑っている剛に対して「なに笑ってるのよ!」と一蹴してしまう。その後、江陵行きの列車で再会した剛とソルは、それぞれの行き先を目指しながら旅を共にすることになる。
ソルは「あなたは私の言葉が理解できないからこっそり弱音をはいているだけ」と剛につぶやき、剛は言葉が分からないながらサングラス奥のソルの悲しげな表情を心配し寄り添っていく。旅を共にするうちに、同じ痛みを抱えていたこと、2人とも“天使“を見たことがあったことなど、言葉が通じ合わなくても、次第に距離が縮まっていく2人の様子が映し出されている。「あなたは私の運命の人なの?」というソルの言葉と、最後に流す2人の涙の理由は……。剛とソルの関係の行方が気になる映像になっている。
石井監督が、あらためて初心に返り、これまでの経験値に頼らずにオール韓国ロケで挑んだ意欲作。優しさと力強さが調和した人間ドラマであり、誰も見たことのない「アジアの家族映画」である本作に期待したい。
NEWS
PICKUP
INTERVIEW
PRESENT
-
【舞台挨拶あり】齊藤工が企画・プロデュース『大きな家』公開直前舞台挨拶付試写会に15組30名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.22 -
『型破りな教室』一般試写会に10組20名様をご招待!
応募締め切り: 2024.11.29