2011年1月8日に劇場公開となる『やぎの冒険』の仲村颯悟(なかむら・りゅうご)監督は、なんと14歳の中学生! この日本映画史上最年少の中学生監督が、12月23日に池袋テアトルダイヤでティーチイン試写会を行った。
沖縄に暮らす仲村監督がビデオカメラで映画を撮り始めたのは小学校3年生の頃から。以来、40本近い作品を作ってきたという。本作は、2009年に行われた沖縄観光のドラマコンペティションに応募され、高い評価を受けた短編をもとに作られた劇場用長編映画だ。
主人公は那覇に暮らす都会っ子の少年。冬休みに沖縄本島北部にある祖父母の家を訪れ、2匹のやぎの世話をしていた彼は、そのうちの1匹がやぎ汁にするために「つぶされる」姿を目撃。大きなショックを受けた主人公の姿を通じて、食や命の意味を問いかける。
仲村監督は、見かけはごく普通のシャイな少年。だが自作について語る言葉は、大人の監督と何ら変わらない情熱と説得力に満ちている。この日の試写会でも、「思った以上にちゃんとした映画でびっくりしました」という観客の素直な意見があがり、監督は笑顔でお礼を述べていた。「テレビ局がお金を出したような映画よりも全然面白かった」と感想を述べたある観客が、劇中に普天間基地が映っていることの意味を問うと「普通の沖縄を描きたいと思った」と監督。「基地は日常風景なので、基地を入れないと普通の沖縄を描いたことにはならない。なので普天間を入れました」と説明。だが、普天間基地が映るものの、それには無関心な主人公という構図にすることで、「普通の沖縄」を表現したとも話していた。
これについては、「基地の問題に触れることはやめておこうかなと躊躇したのですが、本人の希望で入れました」と井出裕一プロデューサー。また当初、プロデューサーたちは、商業的な効果を狙って女の子が登場するシーンも盛り込もうとしたそうだが、仲村監督曰く「そんなのいらないって言いました」。そんな監督の声にプロデューサーたちは、自分たちの不純さを恥じたと苦笑いしていた。
またプロの書いた脚本も細かくチェックし、手を加えていったという。例えば子どもたちのセリフについては「ドラマっぽいセリフで、こんなこと絶対言わないって(笑)……。“言わされている感”があったので、子役の子たちの意見も聞き、自分たちがしゃべるようなセリフにしていきました」と話していた。
一方、中学1年生のときに開いた自作上映会のエピソードからは、ビジネス感覚にも優れた意外な一面もうかがえた。
「公民館を借りて上映会をしたのですが、入場料は無料にしないとお客さんが来ないと思ったので無料にしました。お客さんは100人くらい来たのですが、公民館の使用料やクーラー代がかかるので、募金箱を置いたんです」と仲村監督。すると募金箱には予想以上にお金が集まり、結構な額になったとか。司会が「入場料を取るより良かった?」と聞くと、「はい。もし入場料を取ったとしても1人100円くらいだったので、それよりは!」と嬉しそうに明かしていた。
高校受験を控えた監督に今後の進路について聞くと、沖縄には映画に関わるような高校がないので「頑張って普通の県立高校に行きたい」と受験生の顔がのぞく。だが「そこでも映画が撮れたらいいと思っています」と、映画作りへの情熱も垣間見せていた。
『やぎの冒険』は2011年1月8日より池袋テアトルダイヤほかにて全国順次公開される。
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