ミステリー作家・高橋克彦の小説をもとにした3話から成るオムニバス映画『オボエテイル』。2005年に完成していたものの、制作会社倒産の余波でお蔵入りとなっていた本作がついに公開となり、初日の1月8日に新宿K’s cinemaで舞台挨拶が行われた。
・[動画]『オボエテイル』 予告編
・『オボエテイル』 作品紹介
登壇したのはキャストの村上淳と渡辺真起子、子役の永井穂花(ほのか)、芳田秀明監督、明石知幸監督、久保朝洋監督。さらに、観客として訪れていて急きょ、壇上に上がったのが小林孝至(たかし)。1988年ソウルオリンピックのレスリング金メダリストで、公衆電話に金メダルを置き忘れた人と言えば分かる方も多いのでは?
本作で彼が演じたのは永井の父親役。背が低くがっしりとした体格の役ということでキャスティングされたという。この映画は、現在は接骨院の経営者として活躍している小林の幻のデビュー作でもあったのだ。
舞台挨拶で小林は「どうしても見たくて勝手に来ちゃいました」と照れ笑いを浮かべてから、「(金メダルは)もう失くしませんので」と言い、笑いを誘っていた。
また渡辺は「こうしてポシャりかけた映画をみなさんに見ていただいて嬉しいです」と感慨深げ。村上も「この作品をスクリーンで見ていただく機会がやってくるとは感無量です」と話していた。
和気あいあいとした良い現場だったそうだが、なにしろ6年近く前の作品のため、撮影中のエピソードの記憶も薄れかかっているようで「いい現場でしたよ、というくらいしかないんです(笑)」と村上。渡辺は「最近、いろんなことを忘れちゃう」と嘆きつつも、共演した香川照之について「香川さんは100回演じても、100回同じ演技ができるなと思ったりしていました」と演技派・香川の実力を振り返っていた。
本作は3人の監督が東奔西走して公開にこぎつけたと報じられているが、芳田監督は「実は明石監督が孤軍奮闘してくれて、私は良かった良かったと拍手をしていただけ」と苦笑い。その明石監督は、お蔵入りになった経緯について聞かれると「詳しい話をすると差し障りがあるので(笑)」と説明した上で、「05年の6月に撮影し、9月には完成して半年後に公開するというスケジュールで進んでいたのですが、制作会社の諸事情などで公開が見送られ、その後、35ミリフィルムなども紛失してしまったのですが、ひょんなことからこうして公開されることとなり、一同、感激しています」と笑顔を浮かべていた。
『オボエテイル』は新宿K’s cinemaほかにて公開中。
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