1997年に亡くなったダイアナ妃をテーマにした映画『スペンサー』(原題)が、第78回ベネチア国際映画祭・コンペティション部門でワールドプレミアとなり、本作の公式上映、記者会見が現地時間9月3日に行われた。
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ダイアナ妃演じたクリステン・スチュワートに絶賛の嵐!
本作は、ダイアナ妃が1991年12月のクリスマス休暇に、イギリス王室のメンバーと共にノーフォークにあるサンドリンガム・ハウスで過ごす3日間を描く物語。チャールズ皇太子との関係は冷え切り、王室の中でも浮いた存在となっていたダイアナが、離婚を決意するまでの心の動きをつづっている。
監督は、『ジャッキー/ファーストレディ最後の使命』(16年)で第73回ベネチア映画祭脚本賞を受賞、主演のナタリー・ポートマンをアカデミー賞主演女優賞に導いたチリの鬼才パブロ・ラライン監督。同映画祭では常連なだけに、本作でも受賞に期待がかかる中、各メディアでのレビューも高く、「ザ・ガーディアン」「ザ・テレグラフ」は共に5つ星、「フィナンシャル・タイムズ」は4つ星。
特に主演クリステン・スチュワートの演技は「スリリングで勇敢で魅惑的な作品でクリスティンは見事にダイアナである」「クリステンは今年、最も煌びやかな変身を成し遂げた」「クリステンの演技は完璧」と絶賛されている。本祭の金獅子賞争い、来春のアカデミー賞に向けた賞レースの重要作品として話題性も高まっている。
ワールドプレミアで5分間スタンディングオベーション
クリステンのベネチア映画祭参加は、アイコニックな女優ジーン・セバーグを演じた『セバーグ』(19年)がプレミア上映された第76回以来2年ぶり。メイン会場であるサラ・グランデ前のレッドカーペットに、リボンベルトがポイントのペパーミント・グリーンのスリップ・ドレスに、細身のパンツを合わせた可憐なコーディネートで登場。タキシード姿のパブロ・ラライン監督と共に、詰めかけたカメラマンたちの前でフォトコールに応じた。そして映画祭ディレクターのアルベルト・バルベラ氏のエスコートで、1席空けながらも満席のサラ・グランデ(1200席)に入った2人は大きな拍手で迎えられた。
会場には、今年のコンペ部門の審査員長である韓国のポン・ジュノ監督、同じく審査員で去年、『ノマドランド』(20年)で金獅子賞を受賞した監督のクロエ・ジャオも登場。コミカルなシーンは笑いが起こり、またサスペンスフルなシーンでは息を飲むような緊張感が走るなど、観客が集中している様子を感じさせる上映となった。エンドクレジットが流れ、場内が明るくなるや否や「ブラボー!」という声と共に拍手が起こり、スタンディングオベーションが約5分間続く中、クリステンとラライン監督も歓声に応え立ち上がり、普段はクールであまり表情を崩さない印象のクリステンが、照れながらも満面の笑顔で観客に応えた。
クリステン、ダイアナ妃が「孤独で寂しい思いをしていたことが悲しい」
その後実施された記者会見にて、司会者から「なぜ、ダイアナというテーマを選んだのか」という質問に対し、ラライン監督は「私の母に気に入ってもらえる映画を作りたいと思っていました。ダイアナは著名で美しさにあふれたアイコンでしたが、同時に彼女は母親でもあり、私の母のような普通の人々に深く共感させる力をもった人でした。非常に恵まれた環境に生まれ、貴族出身の人が、なぜあれほどまでにごく普通の人物でいられたのかに、私は長年興味があったんです」とコメント。
クリステンも、監督の言葉を引き継ぎ、ダイアナの人々の心に訴えかける力について「彼女の生まれ持った力。この世界には、突き抜けたエネルギーを持っている人がいますから。ただ、彼女がどんなにカジュアルで魅力的であったにも関わらず、孤独で寂しい思いをしていたことが、本当に悲しい。人に喜びを与える代わりに、心の中では嫌な思いをしている。人とのつながりを心から欲し、エネルギーを惜しみなく使っている…歴史上、そのような人はいなかったでしょう。だから、彼女は本当に光輝くように飛び抜けた存在となったのだと思います」とダイアナの人物像について語った。
さらに「誰もが彼女のことを知っているような気がするのは、それが彼女の才能だからであり、親しみやすく、彼女が自分の友達や母親のように感じられるところに、彼女の美しさがありました。しかし皮肉なことに、彼女は心の内を知ることができない人物であり、心の底では孤独になりたくない人物だったのです」と述べている。
通常の伝記映画と異なり、ダイアナが離婚を決意する1991年の3日間に焦点を当てた構成としたことについて監督は「彼女の長い人生を振り返るのではなく、大きな危機に瀕した瞬間を選べば、彼女の本質にうまく迫ることができるのではないかと思った」と意図を説明した。
ダイアナ同様、パパラッチの標的となった経験もあるクリステン。セレブリティの私生活をスクリーンで見せることについて「他人の私生活に立ち入ることと、芸術が世界にもたらす多様性には違いがあります。この映画は何か新たな情報を提供するわけではありません。この映画の狙いは人々の間にある溝を埋めることにあると思います。仮にもし誰かが私についての映画を作ることがあったとしても、私は盗用されたとか、何かが奪われたとは思わないと思います」と本作への誇りをにじませた。
映画『スペンサー』(原題)は、日本で2022年公開となる。
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