「子ども時代のアイデンティティーの混乱は、ある種の官能性を秘めた時期」…男の子になりすます女の子の心情

#LGBTQ#セリーヌ・シアマ#トムボーイ#教育#ジャンヌ・ディソン#ゾエ・エラン#マロン・レヴァナ#水の中のつぼみ#カンヌ国際映画祭

トムボーイ
セリーヌ・シアマ監督 (C)Claire Mathon
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子ども時代のアイデンティティーの混乱はある種の官能性を秘めた時期

「女の子が男の子になりすます」という設定で、低予算のインディペンデント作品ながら本国フランスでの劇場公開時には30万人を動員する大ヒットを記録した映画『トムボーイ』が、9月17日に公開される。公開に先駆け、セリーヌ・シアマ監督がインタビューに応じた。

・男の子になりすます女の子の映画…鮮烈な印象残す映像の数々はスチールカメラで捉えていた!

シアマ監督は、『トムボーイ』を作るにあたり、カンヌ国際映画祭ある視点部門に出品した前作『水の中のつぼみ』とは違う方法で取り組みたいという気持ちから出発したという。

「『トムボーイ』は、驚くほど短期間で出来上がりました。14人のスタッフと、20日間で撮影したんです。こうした事実には、ラディカルさと力強さという、この映画のスピリットがよく表われていると思います」

また、「女の子が男の子になりすます」という設定は、長いことシアマ監督の頭の中にあったという。

「子ども時代のアイデンティティーの混乱について語ることは、ほとんどタブーのようですが、実際には強い刺激とある種の官能性を秘めた時期なのです」と、映画で表現したかったテーマについて語った。

そんな、「女の子なのにミカエルという男の子のふりをする」ロールを演じた主人公のゾエ・エランは、オーディションで選ばれた。シアマ監督は彼女を「逸材」と語り、「信じられないことに、私たちはオーディションの初日にゾエに出会ったんです」と振り返る。

「サッカーが大好きで、長い髪を切ってもいいと言いましたし、テストのための短いシーンではとても自然でした。彼女はまさにぴったりで、彼女となら一緒に仕事ができると思いました」

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そして、女の子のロール、男の子のミカエルという二重の役柄については、シアマ監督自身がそれぞれの場面で、ロールという女の子に接するように、ミカエルという男の子に接するようにと態度を変えることで演出したという。

「ゾエがロールを演じる場面は主に室内で、私は彼女に集中し、穏やかに接しました。一方、ミカエルの場面は屋外で、私たちの関係も荒っぽくて力強く、声のトーンも変えました。仲間たちといる時に演技をさせるのがいちばん難しくて、彼女はすぐに集中力を失ってしまいました。身を入れる必要のある役で、そこから逃げたくなるのは理解できましたけれどね」

さらに、「子どもたちへの演技指導でいちばん難しかったのは、すぐに疲れてしまうことと、一度仕事したくないと思ったら働かないこと」と語り、ゾエの演じるロールの妹・ジャンヌ役を選ぶにあたり、ゾエと会って何らかの結びつきを直感したマロン・レヴァナに決めた要因を明かした。

そして、「私にとっての前進とは、自由や独立を獲得し、新たな創作や演出の方法を試すことです」と語った。

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自身、LGBTQであるセリーヌ・シアマ監督の名作

夏休み、家族と共に新しい街に引っ越してきた先で“男の子”のふりをして過ごす10歳の女の子ロールの物語。

ロールは、新たに知り合ったリザたちに自分を男の子だと思い込ませることに成功。やがて、リザ(ジャンヌ・ディソン)とは2人きりでも遊ぶようになり、「ミカエル」としての自分に好意を抱かれていることに葛藤しつつも、互いの距離を縮めていく。やがて夏も終わり、新学期を迎える。果たして2人の関係は……?

『トムボーイ』は、9月17日に公開される。