刑事とホテルマンが事件に挑む! 『マスカレード・ナイト』
【週末シネマ】東野圭吾の同名小説を映画化し、興収46.4億円の大ヒットとなった『マスカレード・ホテル』の続編となる『マスカレード・ナイト』。舞台は前作と同じ一流ホテルの「ホテル・コルテシア東京」。潜入捜査のために全てを疑いの目で見据える刑事と、利用客からの無理難題解決が最優先事項のホテルマンがバディとなって再び事件に挑む。
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前作から数年後、警察に匿名の密告状が届く。数日前に起きた殺人事件の犯人が、大晦日にホテル・コルテシア東京の年越しパーティーに現れるというのだ。この時点で犯人の正体は不明、しかも年越しのカウントダウン・パーティーは500人もの参加者全員が仮装し、仮面を着けるのが決まりの「マスカレード・ナイト」だ。
もしも犯人が新たな殺人を計画しているとしたら? 警視庁捜査一課の刑事・新田浩介は、かつて捜査のために潜入したホテルに再び送り込まれ、前回と同様にフロントクラークとしてロビーに立つ。ホテル従業員で新田の相棒を務めるのも、前回と同じ山岸尚美だ。現在はフロントではなく、コンシェルジュとして働く彼女は相変わらず生真面目な性格で、捜査にのめり込むあまり利用客へのサービスを忘れがちな新田と衝突を繰り返す。
長澤まさみが有能なホテルマンを手堅く生き生きと演じる
木村拓哉が演じる主人公・新田刑事は、東野が木村を念頭に執筆したというだけあって、あらゆるシーンのあらゆる表情、仕草、どれを取っても芝居などしていないように思えるフィット感だ。では、木村拓哉そのものなのかといえば、もちろん違う。役の方が演じる俳優に引き寄せられていく、スター・マジックの威力は流石だ。
有能なホテルマン、山岸役の長澤まさみも、仕事ができて真面目で、優しい心の持ち主を生き生きと演じる。バックヤードでどれだけ七転八倒していようが、表に出たら冷静沈着で笑顔を絶やさない。山岸のギャップの魅力を手堅く見せる。木村との丁々発止のやりとりには、ロマンティック・コメディのような軽快さもあって楽しい。
ホテルに集う個性的な人々の人間模様もまた面白い
それにしても優秀なコンシェルジュとは、何とハードルの高い仕事だろう。利用客のリクエストに絶対「無理です」と言わないのは立派だが、その要求が別の利用客を巻き込む場合にはどう対応するのか? そんな疑問に答える展開も劇中に登場する。
次から次へとチェックインする人々は誰もが一癖あり、行動もあやしげだ。誰かの様子が気になって追跡し始めると、別の誰かがもっと疑わしい動きを見せる。右往左往する新田と山岸には、そんな事情を知る由もない利用客から様々なリクエストも飛んでくる。あらゆるタスクに対応しながら、刻一刻と予告された時間が迫ってくる。キャストの顔ぶれも多彩だ。
物語は、未解決の殺人事件とその犯人の正体をめぐるミステリーだが、ホテルという場所に集まる様々な個性が織りなす人間模様として見るのも面白い。パンデミックが続き、旅行やホテル滞在はすっかり縁遠いものになってしまったが、次にホテルを訪れた時はロビーに居合わせた人を思わず観察してしまいそうだ。家族づれの人、たった1人でチェックインする人、にこやかに迎えるホテルマンたち。誰もがそれぞれのドラマを抱えているのだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『マスカレード・ナイト』は、9月17日より公開
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