【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第26回】
この夏いちばんの衝撃は映画『JUNK HEAD』でした。
堀貴秀監督がほぼひとりで創り上げた映画。
池袋シネマ・ロサに自転車こいで汗だくで見に行った。
まず劇場のクーラーでいい心持ちになって、カルピス飲んで天国へ。
映画を鑑賞して地獄の底へ叩きつけられた感覚。
途中で体がぞわぞわしてきた。
これはとんでもない映画に出会っているのだという気持ち。
師匠の落語をはじめて聴いたときに似ている。
・【鯉八の映画でもみるか。】夏の映画とキラッキラの青春『子供はわかってあげない』
SFストップモーションアニメ。
人形を少し動かしては撮影するという気の遠くなる作業。
これを映画製作経験なしの監督が独学で7年かけて、ほぼひとりで作業したというのだからビックリ仰天どころではない。
その証拠にエンドロールに流れるキャストやスタッフの名前はほぼ監督だ。
人類の再生を目指す架空の未来の話。
その脚本もスケールがデカく、また人類と不思議な生物やロボットたちが何重にも折り重なった話。
このご時世に公開されたのはあくまで偶然だろうが、先の見えない不安な毎日を送る我々の将来を暗示しているかのようで、背筋が寒くなる思いもした。
それでいて、ユーモアたっぷりで、いい意味で気持ち悪さ満載で、ふと気づくと王道なストーリー展開な箇所もあり安心感もある。
最後には希望もある。
驚くのは、これは3部作の1部だという。
すべて創り上げるのにどれだけの時間がかかるのだろうか。
予算も相当必要であろう。
しかし、これだけの才能を世界が放っておくはずがない。
この30年間でこれほどの傑物がいたろうか。
ぼくの知る限り、講談の神田伯山と堀貴秀監督は世界をひっくり返すほどの煌めく才能である。
見逃してはいけない。
ハリウッドがバックアップすべきだ。
口を出さずに金を出すべきだ。
自由に創ってもらうべきだ。
もし今の時代に評価されなくても気にすることはない。
必ず後世に、100年後に残る作品だ。
本物は必ず誰かの手によって発掘される。
完結編を体感するまで生きていようと思う。
見終わって、自転車で暑いなか帰っていると、KUWATA BANDの「ONE DAY」という曲が頭のなかを流れた。
涙が溢れた。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
プロフィール/瀧川鯉八(たきがわ・こいはち)
落語家。2006年瀧川鯉昇に入門。2010年8月二ツ目昇進、2020年5月真打昇進。落語芸術協会若手ユニット「成金」、創作話芸ユニット「ソーゾーシー」所属。2011年・15年NHK新人落語大賞ファイナリスト。第1回・第3回・第4回渋谷らくご大賞。映画監督アキ・カウリスマキが好きで、フィンランドでロケ地巡りをした経験も。
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