性同一性障害の世界的アーティストが初日舞台挨拶で新作の売り上げを寄付すると発表

2011.03.28

その他の写真はこちら（5）

性同一性障害の現代アーティスト、ピュ〜ぴる。世界的に高い評価を得る“彼女”が、男から女へと変わっていく8年間に寄り添ったドキュメンタリー『ピュ〜ぴる』が3月26日に公開初日を迎え、ピュ〜ぴる本人と松永大司監督が渋谷のユーロスペースで舞台挨拶を行った。

・ピュ〜ぴるが映画イベントで性同一性障害について涙の告白
・［動画］『ピュ〜ぴる』予告編

もともと友人同士だったピュ〜ぴると松永監督。監督は、2001年に友だちとしてピュ〜ぴるを撮りはじめた当初は映画にすることは考えていず、途中、様々な人の支えを得ながら、この作品が出来上がったと話していた。

そんな長い道のりのなかで、「思い出はいっぱいある」とピュ〜ぴる。失恋、性同一性障害について、家族との関係、去勢手術をするピュ〜ぴるなど、様々な映像が綴られているが、ピュ〜ぴるは「ここに映っていることは、人生のなかでも忘れられない時間です。いろんなことを感じていただける映画だと思うので、何かを感じて持って帰っていただけたら」と語りかけていた。

壇上にはピュ〜ぴるの新作も並べられていて、ピュ〜ぴるは、その売上金を、日本赤十字社を通じて被災者に寄付すると説明。「この作品は、横浜美術館に展示させていただいた作品で、今、制作に入っているゴッド・シリーズのひとつ。今までは自分のなかのアイデンティティや内面の葛藤から制作の源泉を得ていましたが、（今は）新たなステップに進み、神や求道、救い、祈りに興味があり、作っているシリーズです」と新作についても語った。

またピュ〜ぴるは、自身の作品を図柄にしたポストカードを通じて義援金を募ることも明かした。「（無料の）ポストカードをロビーに置いておくので、（募金箱に）気持ちを入れていただけたら」と、時折言葉を詰まらせながら話していた。

最後の挨拶で松永監督は、「今、こういうことが起きて、映画やエンタテインメントが遠い存在になってきていると思うのですが、こういうときだからこそ、外に出て映画館で作品を見て何かを感じてもらい、明日も頑張ろうと思っていただければ。そして、この作品のパワーを、いろんな方に伝えられたら幸いです」とコメント。

ピュ〜ぴるは「この映画は、私のセクシャリティがメディアなどで注目されていると思うのですが、（個人のセクシャリティの先に）家族の物語や愛、勇気などみなさんにつながることが見えてくると思うので、（映画を通じて）生きることや愛し抜くことなどを感じていただけたら、明日からの希望につながると思います」と静かな語り口ながら熱い思いを吐露していた。