在日二世のヤン・ヨンヒ監督が、北朝鮮に暮らす兄と姪・ソナの姿を綴ったドキュメンタリー『愛しきソナ』が、4月2日に公開初日を迎え、ヤン監督がポレポレ東中野で舞台挨拶を行った。
冒頭の挨拶でヤン監督は先月起こった東日本大震災に触れ、「この震災を通して、映画を作る仕事をする者にとって、今、何ができるかを考えました」とコメント。そして、「北朝鮮と震災で被災した東北や茨城を一緒にするのもよくないですが、この2〜3日、日本中の人たちが被災地に物を送っている姿を見て、北朝鮮に荷物を送る母の姿とダブって見えました。(母が、兄たちに荷物を送るように)今、日本中の人たちが、被災された方々に何かしたいと思っていて、その気持ちは(母が兄たちのことを思う気持ちと)一緒なんだなと思いました」と感慨深げに語った。
さらにヤン監督は、北朝鮮と日本の狭間で、両方の国に居場所を見つけられないような思いを抱いていたと明かしてから「でも、今、みんな力をあわせて復興しようとしている日本に居続けたいと初めて確信でき、自分でもびっくりしています」と、震災をきっかけに新たな思いがこみ上げてきたことを教えてくれた。
本作を作った理由については、北朝鮮に住む兄から届いた姪・ソナの写真が、まるで小さい頃の自分を彷彿とさせ、「自分の分身であるソナを撮りたいと思った」ことがきっかけだったと話した監督。ただ、北朝鮮にいる家族をいきなり映像にすることはとてもリスキーだったため、まずは、前作『ディア・ピョンヤン』で日本に暮らす朝鮮総連元幹部の父を撮り、2作目でソナを撮ったと話していた。
また、福島の原発事故の影響で節電が強化され東京が暗くなったことについて聞かれた監督は、「暗くなった東京っていいと思います。電気の灯りで明るいと、目の前のものは見えても、未来が見えない。電気を消してみると、近くは見えづらくても、五感を働かせて、遠くを見るようになる。今まで、目の前だけが明るかったんだなぁと気付きました。深く考え、遠くを見るためには、灯りを消すことも必要」と語っていた。
ヤン監督は自作について「北朝鮮にいる家族に迷惑がかかると思っていても映画を作り続けているのは、私のエゴなのかもしれません」と言ってから、「でも、いつかソナや家族にまた会えると信じさせてくれるのは、やはりみんなが応援がしてくれるからなんです。北朝鮮にいる家族を守るために、私は家族をもっと有名にしなければと思っています」と、家族への思いを語っていた。
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