「僕の作品を見てくれれば、きっと信用してくれると信じていた」
これまで謎に包まれていた天才デザイナーが初めて撮影に応じ、数々の貴重な映像をおさめたドキュメンタリー映画『マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ”』が9月17日より公開中。ムビコレではライナー・ホルツェマー監督のインタビューを掲載中だ。
『マルジェラが語る “マルタン・マルジェラ”』ライナー・ホルツェマー監督インタビュー
世界が認める一流ファッションブランド「メゾン マルタン マルジェラ」を生み出した天才デザイナー、マルタン・マルジェラ。メディアの取材を一切受けず、公の場にも姿を現さないことから、その全貌はずっと謎に包まれていた。ホルツェマー監督は“取材不可能”とされてきたマルジェラのドキュメンタリー制作を、初めて実現した。
最初のきっかけは2017年、自身が手がけたファッション・ドキュメンタリー映画『ドリス・ヴァン・ノッテン ファブリックと花を愛する男』の上映会。ちょうど同じ日にマルジェラの作品を展示する展覧会が開催されており、コレクションを見てすぐに虜になったという。「ファッション業界に強いコネクションを持っている共同プロデューサーに『次の主人公が見つかったかもしれない』って伝えたんだ。そうしたら、彼女にこう言われたよ。『せいぜい夢を見てなさい。絶対に無理だから』って。なぜなら、彼は30年もの間、映画や写真に撮られることなく、インタビューも拒絶してきていたからね。だから、最初は残念だけどこのアイデアを諦めざるを得なかった」。
しかし彼は、展覧会の関係者を通してマルジェラとの接触に成功する。「幸いなことに、マルタンが信頼を寄せる人たちが僕の『ドリス・ヴァン・ノッテン』を見てくれていて、最高の組み合わせだと彼に助言してくれたんだよ。最初のメールを出してから半年後、ついに返信が来た。そしてマルタンは、『もしまだ映画作りに興味があるのなら、会わないか』って書いてきたんだ」。
監督に面会したマルジェラは、ドキュメンタリーの話はしたがらず、展覧会の撮影を依頼してきた。監督はその時点では強引に話を進めたりせず、時間をかけて誠実にマルジェラと向き合い、徐々に彼の信頼を獲得していった。「一旦、一緒に仕事を始めて、お互いのことをよく知り、彼が僕の作品を見てくれれば、きっと僕を信用してくれるはずだと信じていたんだ。(中略)『ドキュメンタリーはすばらしいものになる』と僕はずっと映画製作を提案し続けた。するとマルタンは、自分が話さず、顔も出さない場合、どんなことが出来るかと尋ね始めたので、そこで僕らは様々な話し合いを重ねて、テスト撮影を開始したんだ。撮影中に僕がいろいろ質問をすると、彼は答え始めるようになり、これが映画に向けた出発点。ついに彼が『イエス』と言ってくれたんだ」。
「顔を映さない」という方針は変わらないものの、マルジェラは本作の中で自身の子ども時代やキャリアについて初めて語り、パリの自宅にあるスタジオや祖母の絵画などの貴重な私物も公開。最終的に撮影された映像は200時間にも及んだ。撮影を終え、編集したラフカットを見せた時のマルジェラの反応は……。 ライナー・ホルツェマー監督のインタビュー全文はこちらから
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