内部告発により次々と暴かれる、医療の腐敗と政界汚職…唖然とするドキュメンタリー『コレクティブ 国家の嘘』
もはや対岸の火事ではない…巨大医療汚職を暴くドキュメンタリー! ひとつの事故をきっかけに明らかになる腐敗と汚職
ルーマニアの巨大医療汚職事件を取り上げ、本年度アカデミー賞で国際長編映画賞、長編ドキュメンタリー賞の2部門にノミネートされたドキュメンタリー映画『コレクティブ 国家の嘘』が10月2日に全国公開される。このたび日本版予告編が公開された。
・「何もかも腐敗している」医療と政治の闇は改革できるか? 64名の若者の死から始まった衝撃的すぎる事実に震撼
動画は、27名の若者の命を奪ったライブハウス火災に端を発する事故についての説明から始まる。
ところが、一命を取り留めたはずの入院患者までが病院で次々に死亡、最終的には火災から3か月で死者数が64名にまで膨れ上がってしまったことが告げられる。
やがて、いち早く取材を始めた地元のスポーツ紙「ガゼタ・スポルトゥリロル」に寄せられた関係者の内部告発により、彼らの死因が火災時のやけどではなく感染症であることが明らかに。
さらに、背後に腐敗と汚職が隠されていたことを暴こうとする女性記者が、諜報部から「家族もいるだろ、気をつけろ」といった脅迫めいた言葉が投げかけられたと告白するシーンが流れる。
公文書の偽造疑惑に対してまともに答えようとしない大臣に対し、懸命に食い下がる記者たちの姿も、到底対岸の火事とは思えない。
後半に登場するのが、新たに誕生した正義感あふれる保健省大臣。事件に関わる政策を管轄する大臣として、腐敗の中枢でもある政府の中から事件に立ち向かう現職大臣にも密着していく。
本作で撮影も担当したアレクサンダー・ナナウ監督は、本作におけるほぼ全てのシーンの撮影を一人で行った。取材活動の妨害とも取れる言葉を投げかけられた記者のように監督自身は身の危険を感じることはなかったものの、撮影中に諜報機関により電話を盗聴されていたことを把握していたという。
このため、制作中はフッテージ素材を厳重に管理しながらいくつもコピーをしたり、時には素材をルーマニア国外に運び出すなど、素材とプロジェクトを守るため、常に臨戦態勢で臨んでいたことを明かしている。
そんな監督が撮影する上で心掛けていることは、誰かが撮影していることを忘れるぐらい観客が登場人物と直接的な繋がりが持てるようにすること。
「映画でも小説でも、素晴らしいストーリーテリングというのは、ストーリーの中にいることを忘れてしまうものです。そういう風にすることが私の仕事であると思っています」
スリラー映画よりもスリリングなドキュメンタリー映画
本作品は、ライブハウス「コレクティブ」での火災を発端に明らかになっていく巨大医療汚職事件の闇と、それに立ち向かう市民やジャーナリストたちを追った、フィクションのスリラー映画よりもスリリングなドキュメンタリー映画だ。
監督は、世界各国の映画祭で上映され数多くの賞を受賞した『トトとふたりの姉』のアレクサンダー・ナナウ。地道な調査報道を続けるジャーナリストを追う前半から一転、映画の後半では熱い使命を胸に就任した新大臣を追い、異なる立場から大事件に立ち向かう人たちを捉えていく。
命の危険を顧みず真実に迫ろうとするジャーナリストたちの奮闘に思わず手に汗握るだけでなく、日本を始め世界中のあらゆる国が今まさに直面する医療と政治、ジャーナリズムが抱える問題に真っ向から迫る内容が評価され、世界各国の映画祭で28の賞を獲得し、51ものノミネートを果たした。
また、非英語映画でありながら、タイム誌が選ぶ2020年ベスト映画の第2位に選出されたほか、ローリングストーン誌では第1位に選出。ヴァニティ・フェア誌第3位、インディ・ワイアー第3位となり、ワシントン・ポスト紙は「これほど現代社会を象徴する映画はない」と評した。
『コレクティブ 国家の嘘』は10月2日に全国公開される。
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