連載開始から21年。原作コミックは50巻に達し、関連本も含めると9600万部を売り上げるという大人気シリーズ『クレヨンしんちゃん』。その劇場版19作目となるのが現在公開中の『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦』だ。
スーパー5歳児のしんのすけが大活躍する本シリーズ。今回は初の本格スパイアクションとなっている。7歳にして大人顔負けの一流スパイという少女・レモンに導かれ、我らがしんちゃんがスパイとしてトム・クルーズ張りに大活躍する。
笑いも満載、おならネタ炸裂で“おならづくし”の観もあるこの最新作を手がけた増井壮一監督に、映画の見どころなどを聞いた。
・『映画クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ 黄金のスパイ大作戦』初日舞台挨拶
──人気シリーズの宿命だと思いますが、今までの流れを汲みつつ新たな面白さを提供しなければいけないというあたりは難しかったのでは?
監督:そうですね。難しかったし悩みどころでした。「あまり前の作品は気にしないで、自由にやって」と言われたのですが、そうは言っても、テレビや映画をずっと楽しんできた人には漠然とした期待や約束事があると思います。そこは裏切れないので、注意しながら作っていきました。
──どんな風に自分らしさを出しましたか?
監督:お笑いづくしにしたいというのが目標でした。なので、できるだけお笑いの要素を増やすようにしました。
──実写映画でも“笑い”は難しいと言われますが、それをアニメでするのは大変なのでは?
監督:やっぱり難しいですね(笑)。例えば、お笑い芸人さんは、自分で考えたネタやテクニックを、自分の身体を使って表現できる。でも、アニメは絵を描く人、編集する人、声優さんなど多くの人が関わるので、ピッタリと意図通りにお客さんを笑わせるのは難しい。狙った場所で笑ってもらえるか、最後まで不安でした。
──本作では“ヘーデルナ王国”“メガヘガデル II ”といった固有名詞を見ても分かるように、“おならづくし”の作品でもあります。おならの音にもこだわられたと聞いたのですが。
監督:今回の映画みたいに大きなおならの音は、今までには多分なかったと思います。音については、トロンボーン奏者の方におならを真似して吹いてもらったりして、何種類ものパターンを録音しました。一番こだわったところだし、結構、贅沢に作らせてもらいました。
──ところで、日本のアニメは世界でも高く評価されていますが、どこら辺が魅力だと思いますか?
監督:1つは、かわいくて楽しいからだと思います。“KAWAII”はもはや共通語ですし。あとは“格好いい”というのもあると思います。
──日本のアニメ業界の現状については、問題点などありますか?
監督:慢性的に人手が足りないですね。今まではそれを中国や韓国が補ってくれましたが、今後、そういったサポートがなくなると、日本国内だけでまかなえるのかちょっと心配です。
また、前から言われていることですが、若い人たちはなかなかこの仕事では生活が維持できない。僕が20歳の頃からそうだったので、改善されるといいのですが……。
──どこを改善するといいと思いますか?
監督:今はフリーランスが一定期間集まって、ワーッと作って解散することの繰り返しですが、もう少し長い期間、上下関係込みで交流できるゆとりがほしいですね。そうすれば技術も引き継ぐことができるので。
──監督から見て『クレヨンしんちゃん』の魅力はどこですか?
監督:親は見せたくなくて、子どもは見たがるという部分が最大の魅力。なので、監督しているときは“アンチ親”を目標にしていました。僕の子どものころも、PTAが敬遠する作品ほど、子どもたちには魅力的だったので(笑)。
しんちゃんは、素のままでいるところが魅力ですね。誰にも遠慮しないで思った通りに行動する少年。子どもが一番喜ぶのはそこなんだと思います。
──最後に見どころを教えてください。
監督:見どころはおならです(笑)。みんなに笑ってもらいたいという気持ちで作りました。おバカな笑いが満載なので、少しでも笑ってもらえると嬉しいです。
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