モノマネや1人芝居などで人気を博すタレントの前田健が初監督した『それでも花は咲いていく』(5月7日よりテアトル新宿ほかにて全国公開)。小学校の教え子に“してはいけないこと”をしたという罪を背負った元進学塾講師、最愛の母の死を乗り越えられない男、容姿にコンプレックスを持つ男など、特殊な性癖を持つ“変態”と呼ばれるマイノリティたちの姿を描き出す。
2009年に前田自身が書き下ろした処女小説を映画化したこの人間ドラマについて、前田監督に話を聞いた。
──映画化の経緯を教えてください。
前田:僕が出版した小説を社長が気に入ってくださり、「お前やるか?」と映画化のお話しをいただきました。これは二度とないチャンスだと思い、「はい!」と言って飛びつきました。
──花をモチーフにした作品ですが、その理由は?
前田:ひどい目に遭っても悲しい思いをしても、また人を好きになってしまうという繰り返しを、散ってもまた咲く花に例えたかったんです。
──小説では9編の物語が描かれていますが、映画化にあたって「エーデルワイス」「ヒヤシンス」「パンジー」の3作を選んだ理由は?
前田:女性が出てくるのは5編、男性が出てくるのは4編あったのですが、女性の作品は比較的裸のシーンが多くて映像化しにくいかなと思い、男性の4編のなかから映像が浮かびやすい3編を選びました。
──セクシャルマイノリティをテーマにした理由は?
前田:僕自身もゲイで、自分用には作られていない世の中でどうにか生きているのですが、一度、負の部分にぶつかって、それでも前向きに生きている姿、不器用でも生きているということを物語に置き換えて描きたかった。ゲイ以外にもマザコンやレズビアンといったセクシャルマイノリティがあって、その方が、何となく生きているよりはいろいろと葛藤があってみっともない格好良さというか、醜い美しさを表現するにはよかったのでテーマにしました。
──初監督に挑戦した感想は?
前田:お笑い芸人や役者をやらせていただいているうちは、僕という人間の制約からは逃れられませんが、監督は頭のなかだけで仕事ができるというか、自分という身体から解き放たれてノビノビとお仕事できる。しかも、ステキだと思う役者さんをキャスティングして自分が書いた脚本をセリフにして現実のシーンにでき、それに対して「OK!」とか「もう一回!」とか言えるというのは非常に贅沢な時間で、ずっとドーパミンかアドレナリンかが出っぱなしでした。ヤバイ楽しみを知ってしまったな、というほど楽しかったです。眠いことも時間がなくてバタバタしていたことも全部ふくめて楽しかったですね。
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