今泉力哉監督、撮影現場で起きた志田彩良のミラクル明かす「あれは役者の生理」

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(C)2020 映画「 かそけき サンカヨウ」製作委員会
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今泉力哉監督

『ドラゴン桜』で活躍した志田彩良と鈴鹿央士が出演する映画『かそけきサンカヨウ』より、本作を手がけた今泉力哉監督のインタビューコメントが到着。志田の演技などについて語った。

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今泉力哉監督が自ら映画化を熱望 原作の魅力語る

窪美澄の同名短編小説を原作とする本作は、家庭環境のせいで早く大人にならざるを得なかった高校生・国木田陽(志田)の葛藤と成長が、同級生・陸(鈴鹿)との“恋まではたどり着かないような淡い恋愛感情”を交えて描かれている。監督は今泉力哉。志田が今泉監督と映画で顔を合わせるのは『パンとバスと2度目のハツコイ』(18年)、『mellow』(20年)に次いで3度目となる。

今泉監督は、本作の映画化を自ら熱望。原作である短編集「水やりはいつも深夜だけど」の魅力を「人によっては囚われてしまうような“家族”を、みんな絶対的にいいものとして言葉にすることについて前々から疑問を持っていて。でもこの短編集は“歪みのある家族”について描いていた。その点に惹かれました」と語り、なかでも、幼い頃に母親が家を出て以来、父とふたり暮らしをしてきた少女・陽の葛藤と成長を描いた一篇「かそけきサンカヨウ」に引きつけられたという。

「出て行った生みの母との関係も、普通ならもっと憎しみの率を高くして書きそうなところを、陽は画家である母に対してある種の憧れを持っていたりする。新しくできた妹に対しても、もっと憎しみや嫉妬があってもおかしくないのに、そうは書いていない。“普通はここに葛藤を作る”というところ以外にさまざまな溜め込みがあり、しかもその描き方が丁寧。作り物ではない本当の悩みって感じがしたんです」と話し、「言葉にするなら、ある家族の再生の物語、とかなのかもしれませんが、言葉では説明できない細微な感情をめいっぱい詰めこんで映画にしました」と述べた。

今泉監督は、父・直(井浦新)と陽の10分弱の長回しシーンにも言及。本番前に父親のセリフを足してもっと説明した方が良いとなり、直のセリフを増やしたバージョンでテスト。しかし、志田は“足された父のセリフ”を飛ばして、その後の自分のセリフを言ってしまう。あらためて井浦と志田で話し合い、直のセリフは足さずに本番を撮影することになる。今泉監督は撮影を振り返って「あれは志田さんのミスではなく、そういう役者の生理だったんだと思います」と語る。

さらに今泉監督は「こういうことが現場で起こると、作り物ですが、どんどん本物に近づくと思えるんです」と持論を展開。「もちろんフィクションはある種の嘘をつくことで面白くなることもあるとわかっています。でも、やっぱり好みなんでしょうね。自分は嘘の許容範囲がすごく狭い。物語のためにキャラクターが存在したり、動いたりする、というようなことは自分が映画を作るときはできるだけなくしようと思っているんです」と明かした。

『かそけきサンカヨウ』は10月15日より全国公開。