この夏、パレスチナが舞台の映画が3本、公開される。常に緊迫した状況に置かれている彼の国の現状を描いたこれらの映画について語り合うシンポジウム「パレスチナ・イスラエル映画祭―こどもと明日と未来を考える」が7月20日に東京外国語大学にて開催された。
この日は、中近東地域の研究をする臼杵陽日本女子大学教授、ジャーナリストで映画監督の古居みずえ、山本薫東京外大教授ら4人のパネリストと学生たちが、上記3本の映画について語り合った。
まずは現在公開中の『いのちの子ども』。難病のパレスチナ人の赤ちゃんを救おうとするイスラエル人医師とイスラエル人ジャーナリストの姿を描いたドキュメンタリー映画。この作品について東京外大アラビア語学科3年の今井花南さんは「人間の多面性が描かれていると思いました。それぞれの人のなかで色々な葛藤があり、決して簡単な二項対立で語ってはいけないと思いました。また、私は爆撃のシーンや、パレスチナ人の母親がイスラエル人に対して感情的になるシーンなどを見ても、どこか彼らに共感出来ない部分があり、もどかしさを感じました」とコメント。古居監督は「メディアが発信するパレスチナのニュースは印象の強いものばかりで私も共感は出来ません。でも、その地には普通の人たちがいて、彼らの生活部分が見えることによって共感できると思います」と話していた。
続いて、イスラエル軍の非道な行動を目の当たりにして敵対心をつのらせていく女性の姿を通してパレスチナ問題の真実に迫った『ミラル』(8月6日より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開)。東京外大アラビア語学科4年の神田春奈さんは「暴力以外の和平的な方法で、パレスチナ人としての誇りやアイデンティティを見出していく映画。パレスチナの社会では女性が弱いイメージがありましたが、この映画では男性社会の中での女性の存在が普通に描かれていました。ミラルたち女性の生き方から、誰にでも通じる普遍的なことが伝わってくるのではないかと思います」と映画についての感想を寄せた。
3本目は、イスラエル軍による侵攻で一度に29人も殺される悲劇を体験した一族の生活を、パネリストでもある古居監督が、子どもたちの視線を通じて描いたドキュメンタリー『ぼくたちは見た ―ガザ・サムニ家の子どもたち―』(8月6日より渋谷ユーロスペースほかにて全国順次公開)。古居監督は「この出来事が遠い国のもののように感じていた方もいらっしゃったと思いますが、今の日本では他所の国で起こっていたようなことが起こっているんです。これは不幸なことですが、この経験をした日本人1人ひとりが、外の国で起こったことの痛みを感じられるようになっているのではないかと思います。今こそこういった映画を見て欲しいと思います。悲しいだけの映画ではなく、生きるための映画です」と語っていた。
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