野党の内ゲバ体質には苦笑い
昨年6月に公開され、ドキュメンタリー映画としては異例の大ヒットとなった『なぜ君は総理大臣になれないのか』。地盤・看板・カバンなし、選挙に弱い小川淳也衆議院議員(立憲民主党)の、初出馬からの17年を追った作品で、観客動員35000人超、キネマ旬報ベスト・テンの文化映画第1位を受賞するなど、大きな話題となった。
その続編となるのが『香川1区』。小川議員の選挙区をタイトルにした本作は、第49回衆議院議員総選挙に焦点を当てたもので、日本の政治の今後を問う作品となる。ムビコレでは、本作を撮影中の大島新監督へのインタビューを敢行、その動画を公開中だ。
タイトルでもある香川1区は、大きな注目を集める選挙区でもある。なぜなら、小川議員のライバルが、前デジタル大臣でもある平井卓也議員だから。小川議員が挑むのは、地元でシェア6割を誇る四国新聞と西日本放送のオーナー一族の御曹司で大臣経験者なのだ。映画は、小川議員に寄り添った前作から一転、今回は平井議員にも直接取材し、日本の選挙とは何かを描き出す。
前作『なぜ君』で印象的だったのは、とにかく小川議員の「庶民派ぶり」「普通の感覚」。そして、「政治というのは、(選挙で)勝った51が、どれだけ残りの49を背負うかなんです」という彼の言葉。そして、「(今の政治は)勝った51が、51のために政治をしている」と悔しそうにつぶやく姿に胸を打たれた人も多いのではないだろうか。そんな小川議員の真摯な姿勢に大島監督は、「(彼のような人がくすぶっているのは)小川淳也の“人的無駄遣い”なんじゃないかと思った」と語る。
大島監督は、新作の『香川1区』で、小川議員の戦いぶりだけではなく、平井陣営の様子に迫る。小川議員は平井議員に6回挑み、5回負けている。「自分が投票した人が勝った試しがない」と笑う大島監督は、5勝している平井陣営の強さの源泉を描きたいというが、警戒心を抱かれているせいか「取材は難航している」と残念そう。
『なぜ君』では、小川議員の純粋さ、純朴さに感動した一方、「政治家はそれだけではダメなのでは」と感じた人も多かったはずだ。それは野党の戦いぶりにも重なって見える。大島監督は、そんな野党と自民党の違いを、“権力への執着心”という言葉で解釈してみせる。そして、理想主義者だからこそ少しの差異が許せず、内ゲバに走りがちな野党に苦笑いする場面も……。
以前から「50歳引退」を公言してきた小川議員について「“良い仕事をして”というのが前提なはず」と語る、厳しくも温かい言葉も印象的だ。
・[動画]前デジタル大臣VS既得権益に挑む男の戦い追う/『香川1区』大島新監督インタビュー#1
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