最初は、時代錯誤だと思っていた
アイスランドの家政学校に密着したドキュメンタリー『〈主婦〉の学校』が公開中。ムビコレでは、ステファニア・トルス監督のインタビューを掲載中だ。
世界最北の首都、アイスランドのレイキャビクに、1942年に創立された伝統ある「主婦の学校」。寮で共同生活を送りながら生活全般の家事を学ぶことができる、一学期定員24名の小さな学校だ。かつて義務教育後に進学の機会が少なかった女性たちを、良き主婦に育成することを目的としていた家政学校は、時代と共にその多くが衰退していくなか、「主婦の学校」は1990年代に男子学生も受け入れて男女共学となり、現在まで存続。初歩的な家庭料理から伝統料理の調理法、衣類の種類に応じた洗濯法や正しいアイロンがけ、美しいテーブルセッティング&マナーなど、理論と実技を実践的に教えている。本作は、時代の移り変わりと共にその役割を変化させてきた「主婦の学校」に注目したドキュメンタリー映画だ。
世界経済フォーラム公表の「ジェンダーギャップ指数ランキング」12年連続1位の“ジェンダー平等”が進んでいる国・アイスランドで、「主婦の学校」の存在を知ったトルス監督。最初は、時代錯誤だと否定的に思っていたが、調べていくうちにこの学校が性別に関係なく「いまを生きる」ための知恵と技術を身につける場所だとわかり、ドキュメンタリーを作りたいと思うようになったという。
「編集を始めるまで、この学校のエコ的な側面を意識していませんでしたし、最初からそれを目指していたわけではありません。開校以来、この学校で教えていることは、多少の変更はあるものの、ほとんど変わっていません。彼らは基本に立ち返り、自給自足の方法を学んでいるのです。例えば、出来るだけ生ゴミを出さないようにすることや、新しい服を買う代わりに破れた服を直せるようになることなどです」。この学校は、まさに今、私たちが知るべきことを教えてくれていると思ったとトルス監督は語る。
トルス監督は、この学校に男性が多いことにも驚いたという。「この学校の学びが、女性も男性も関係なく誰にとっても役立つということなのでしょうね」。
この学校について調べていくうちに、〈主婦〉という言葉に込められたリスペクトを知ったというトルス監督。「家事は女性だけの仕事ではありません。女性が仕事をしていて、主婦をしている男性もいます。つまり、私たちは皆、主婦だと言えるでしょう。〈主婦〉という言葉はネガティブな意味を持ってしまっているように思いますが、本来はその逆で、ポジティブなものであるべきです」。この学校は、以前は「主婦の学校」と呼ばれていたが、1970年代に「家政学校」に名称が変更された。映画のタイトルにするにあたり、トルス監督は敢えて昔の名前を復活させた。
インタビューでは、映画がきっかけで生まれたトルス監督の生活の変化や、監督自身が感じた「主婦の学校」の魅力についても語られている。ステファニア・トルス監督のインタビュー全文はこちらから。
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