8月18日〜28日まで開催されていた第35回モントリオール世界映画祭で、審査員特別グランプリを受賞した『わが母の記』。その受賞報告会見が9月1日に京都市中京区にある大江能楽堂で開かれ、メガホンを取った原田眞人監督と主演の役所広司が登壇し、受賞の喜びを語った。
・『わが母の記』がモントリオール映画祭特別グランプリ受賞
・『わが母の記』受賞報告会見、その他の写真
現在、『わが母の記』と同じく井上靖原作のスペシャルドラマ『初秋』を撮影中の原田と役所。現地に行っていた息子・遊人(ゆうじん)からの「審査員特別賞ゲット」というメールで受賞を知ったという原田は「(最初は)ピンとこなかった。賞を獲れたとしたら主演女優賞じゃないかなと思っていたので。そしたら電話が入り、樹木(希林)さんから『喜びなさいよ! 大きい賞ですよ。(紹介されたのが)最後から2番目ですよ』と言われた。1番気になっていたのが観客の反応だったので、素晴らしかったという話を聞いた時点で涙が出てきた」と喜びのコメント。
役所は「(受賞発表後に)希林さんと電話でお話しをした。クールな方なのですが、このときはかなりテンションが高く、希林さんの声から現地の興奮が伝わってくるような感じがした」と話していた。
また、本作が評価されたポイントについて役所は「世界中どこの国に行っても、母親に対する思いはきっと同じ。言葉は通じなくても母親を思う気持ちと、母親と心が通じ合う喜びというのは、世界的に共感していただけるところだと思っていた」と語った。
本作のクランクアップは3.11の大震災前日。「撮り終えた日(3月10日)は気分が高揚していた。関わったスタッフ・キャストみんながハッピーな1日だったと思う」と話す原田は、その翌日(3月11日)から都内スタジオで編集作業に取りかかり、地震に遭遇したという。「それから、日々テレビで流されるニュースを見て涙を流していた。その思いが、この映画にもこもっている。この映画がどれだけ悲しみにあった人に癒しをもたらすことができるかはわからないが、未曽有の大災害から立ち上がるなかで必要なのは家族の絆」と、その思いを口にしていた。
一方、役所は「最近、大人も楽しめる映画が少なくなっている。映画はビジネスだから、たくさんの人に来てもらって、ヒットして、ビジネスとして成功しなければならないが、やはりインスタントものですぐ美味しいものばかりでなく、しっかり噛みしめてじんわりと深いもの、50年後に見ても楽しめる映画も作り続けなくてはと思う。この映画は、監督が5年前から企画され、ご自身の出身地・沼津を舞台にしているのでさらに思い入れも深い。こういう作品を作っていかなくてはならない」と、本作に込めた思いを語っていた。
『わが母の記』は2012年に全国公開される。
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