『萌の朱雀』(97年)でカメラドール(新人賞)、『殯(もがり)の森』(07年)で審査員特別グランプリを受賞と、カンヌ国際映画祭の常連である河瀬直美監督。その河瀬にとって4度目の同映画祭コンペ部門正式招待作品となった『朱花(はねづ)の月』が9月3日に公開初日を迎え、ユーロスペースで行われた舞台挨拶にキャストの大島葉子、明川哲也、山口美也子、小水たいがが登壇した。
朱花という色に見せられた染色家の主人公・加夜子を演じた大島は、去年、約1ヵ月かけて行われた撮影を振り返り「とても大変な撮影でした。初日を無事に迎えることができ、とても嬉しく思います」と挨拶。
加夜子の恋人で、長年一緒に暮らしている哲也を演じた明川は「彼女(大島)の消耗がひどかった。これはリアリティを追求する映画で、実は一緒に暮らしていたんですけど」と仰天コメント。「疲れて帰って来て寿司屋に行ったら、寿司屋の人から本当の夫婦だと思われ『奥さん、大丈夫ですか?』と言われた」と話すと、これを聞いた大島が「(寿司屋に行ったことは)監督には内緒なですけどね。孤独な役だったので」と話し、笑いを誘っていた。
その大島は撮影現場について「準備期間中から、自分で住んでいる家をペンキで塗ったり、ミシンでカーテンを縫ったり、スタッフの人たちと一緒に庭造りをした。そのなかで加夜子がどんどんできあがっていった」と河瀬組のこだわりを説明。だが、「撮影に入ってからはどんどん追い込まれ、実際に食事ものどを通らなくなり、5回点滴を打った」と、過酷だった現場を振り返っていた。
一方、河瀬組は『火垂』(00年)以来の参加となる山口は「『火垂』でもヒロイン役の女の子と3ヵ月間、一緒に暮らさせられた。ホテルを取ってくれないので」と苦笑い。さらに、『火垂』でストリッパー役を演じていた山口は「(監督から)ちょっと呼ばれて『ほんまもんのストリッパーになっていってほしいんや』と言われた(笑)。私は俳優なので、ほんまもののストリッパーに近づく努力はするけど、なってほしいと言われて困った」と告白。河瀬監督については「虚構と実像の境がきっちりするのが、あまりお好きでない方。しかも演技をしているというのを見せてはいけないので、俳優としてはすごくやりがいがある。本気で(監督が)ぶつかってきますから、こちらも命をかけて芝居をしなくてはいけない」と、その魅力を語った。
また、制作も兼ねていたという小水は「『何で僕が?』と思いながら、桑を持って畑を耕し、根っこを取り、ムカデに刺され、熱射病になりかけていた。なのに監督が来て『何で休んでるの』って言われた」とぼやくと、山口は「そういう作業が役に立ち、映像に映っているのよ」と話していた。
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