76歳のダンサーを85歳のカメラが捉える…「私はそこに居ながら、心は遠くへ放たれていた」
『名付けようのない踊り』ポスタービジュアル2枚が公開
犬童一心監督が、世界的なダンサーとして活躍する田中泯の踊りと生き様を追った映画『名付けようのない踊り』が、来年22年1月28日に公開される。このたび、ポスタービジュアル2種が公開された。
『名付けようのない踊り』のポスタービジュアルは、アートディレクター町口覚によって「身体を映さずにあえて顔だけで“踊り”を表現する」というコンセプトのもと、写真家・操上和美には撮影、アニメーション作家・山村浩二には描き下ろしを依頼。
本ポスターでは、85歳の写真家・操上と76歳のダンサー田中のせめぎ合いによって生まれた奇跡の1枚を採用。操上が捉えたのは、田中が立ち尽くしたまま表情だけで踊り、視線が宙を舞い、やがて恍惚とした表情に変わった奇跡的な瞬間だ。ブロンズ色は、田中の圧倒的な存在感と表情を際立たせたいと操上が選んだ。
撮影を終えた直後に田中は、「操上さんとのセッションは、レンズの存在を感じさせない。私はそこに居ながら、心は遠くへ放たれていた。幸せな瞬間でした」と語った。
一方の操上も、「田中泯さんはカメラの前に立ったまま旅をしている。その目は何億光年先を見つめているのか……やがて魂がその肉体に宿った瞬間にシャッターを切らないと、本当の田中泯を逃してしまう」と、その駆け引きを振り返った。
もう1枚のアニメーション作家・山村による色鮮やかな田中の画は、集中力が極限に高まった「踊る前の表情」を切り取ったもの。
山村の作風といえば、米国アカデミー賞短編アニメーション部門に日本人で初めてノミネートされた『頭山』や、NHK『おかあさんといっしょ』のイラスト等の温かいタッチを連想するが、今回のポスタービジュアルは田中の内なるエネルギーを受け、異なる印象を醸し出す1枚となった。
「胸が騒ぐ」「五感が覚醒する映像体験」といったコピーと共に、力強い視線がこちらに向けられており、操上の1枚とはある意味で対照的だ。
山村は、映画制作時は田中の幼少期の2枚の写真から子ども時代の田中を想像して描いていたと語る一方で、このポスターでは操上の写真イメージを参考に描いたという。
「現実の泯さんに初めて対峙することができました。皮膚の皺、顔の筋肉、髭、眼球、それぞれが沸き立ちながら、ギリギリで全体を構成している泯さんの表情を、なんとか捕まえようとした痕跡です」と語り、山村にとっても今回の制作が大いなる挑戦だったことがうかがえる。
田中泯と共に旅するような新感覚映像体験
本作品は、1978年にパリデビューを果たし、世界中のアーティストと数々のコラボレーションを実現するなど、現在までに3000回を超える公演を実現してきた田中泯のダンスを、『メゾン・ド・ヒミコ』への出演オファーをきっかけに親交を重ねてきた犬童一心監督が、ポルトガル、パリ、東京、福島、広島、愛媛などを巡りながら撮影し、アニメーションなども交えながら描いたドキュメンタリー作品。同じ踊りはなく、どのジャンルにも属さない田中のダンスを間近に感じさせながら、見るものの五感を研ぎ澄ます新たな映像体験をもたらしてくれる。
『名付けようのない踊り』は、来年22年1月28日に公開される。
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