色褪せない名曲「悪魔を憐れむ歌」誕生の舞台裏

ジャン=リュック・ゴダール監督がザ・ローリング・ストーンズのレコーディング風景を撮影した伝説の音楽ドキュメンタリー映画『ワン・プラス・ワン』。このたびの12月3日のリバイバル上映のきっかけとなった名ドラマー、チャーリー・ワッツの逝去にちなみ、チャーリーの場面写真が公開された。

本作品は、ミック・ジャガーとブライアン・ジョーンズが向かい合い音を合わせているところから始まる。

ボブ・ディラン調のフォークソングから始まり、着々と音が仕上がっていく中で、ドラムが刻むリズムはなかなか定まらない。

ミックから「まともに叩いてくれよ!」と檄を飛ばされながらチャーリーは試行錯誤を繰り返し、最終的にたどり着いたのは、ジャズとサンバが合わさった独特のリズム。ここに呪術的な歌詞や叫びなどが重なり、いつ聞いても褪せることのない名曲が誕生したのだった。

シャイなチャーリー・ワッツが辻はグルーヴの要

チャーリーのドラムスのルーツはジャズにあり、ドラマーを目指すきっかけとなったのはサックス奏者ジェリー・マリガンがチコ・ハミルトンをドラムに迎えて演奏した1952年の「Walking Shoes」だったという。

14歳でドラムセットを親に買ってもらったチャーリーは、16歳には街中で演奏をしていた。80年代後半にはストーンズで演奏する傍ら、スケジュールが許せばジャズのソロアルバムを出すなど、精力的に活動を続けていたという。

メンバー内では控えめな存在で、ライブのメンバー紹介で隠れてしまいドラムセットだけがそこにある、というほどシャイだったチャーリー。しかし、本作品で奏でる唯一無二のドラムのグルーヴ感は、圧倒的な存在感を放ち、メンバー内の核となる存在だったことは一目瞭然だ。

ゴダールの誕生日に43年ぶりのリバイバル上映

この作品は、来年22年に結成60周年を迎える平均年齢76歳のストーンズをゴダール監督が捉えた68年製作の伝説的なドキュメンタリー。日本で初公開されたのは78年11月1日で、今回実に43年ぶりのリバイバル上映となる。

当時のロンドンを舞台に、バンド黄金期を迎える若き日のストーンズのレコーディング風景が収められており、ロック史に残る名曲「悪魔を憐れむ歌」が完成するまでの過程と、社会運動にかかわるドキュメンタリーめいたフィクション映像が交差するスタイリッシュな音楽映画だ。

ちなみに、公開日の12月3日は、ゴダール91歳の誕生日でもある。

『ワン・プラス・ワン』は12月3日に公開される。