「あぁ、ポール! 会いたかったよ、ポール!!」と思わず叫んでしまったワタクシ。『宇宙人ポール』は鉄板のSFコメディである。もともと鑑賞前から期待値はMAXだった。しかしこの“期待”というのは非常にやっかいな足枷。幾度となく頬を涙で濡らしてきたか……。だが今回、期待は裏切られることなく、それ以上の笑いと感動を味わった。
MAXへと導いた大きな理由は、まず宇宙人モノだから。しかもいわゆるグレイと呼ばれる宇宙人タイプそのものの造形!「なんだ、このTHEエイリアンは!!」と宇宙へロマンを馳(は)せる者としてテンション、ア〜ップ! (このグレイタイプ、本編ではそもそもポールの存在があったからこそ、広く知られるようになったことになっている)。さらに『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のサイモン・ペッグ、ニック・フロストの作品である。これはもうハズレのワケがない。
イギリスからアメリカにやってきたSFオタクのグレアムとクライヴ。彼らはアメリカ最大のコミックマーケットにしてオタクの祭典「コミコン」に参加。続けて、かねてより夢だったアメリカ西部のUFOスポット巡りを、レンタルしたRV車でスタートさせる。そして、ロズウェルで墜落したUFOに乗っていた宇宙人を隠していると噂されてきた「エリア51」を過ぎたあたりで事件が!
猛スピードで追い越してきた車が道を外れて事故った。恐る恐る近づいたグレアムとクライヴは、ついに遭遇する。ホンモノのエイリアンに!! だが自らをポールと名乗る彼(?)は、英語はペラペラ、陽気で毒舌、下品なネタも大好き。しかもクール。見かけはTHEエイリアンなのに、超親しみやすい“人物”だった。
彼は60年前に地球に墜落。これまでアメリカ政府に様々な情報を提供し文化的にも貢献してきたが、ついに身体そのもの=命が危ないことを知り、施設から逃げ出してきたという。そして故郷へ帰りたいと。最初こそ、受け入れがたい2人だったが、ポール帰星ミッションを遂げるため、これまでにない冒険を体験していく。
本作はSF映画への愛に満ちている。『スター・ウォーズ』や『スター・トレック』ネタに始まり、数多くのオマージュが散りばめられている。そして何よりも『E.T.』と『未知との遭遇』を生み出したスティーヴン・スピルバーグ愛がスゴイ。『続・激突! カージャック』を思わせるスリル満点のシーンもあるし、クライマックスが展開するのは“あの聖地”だ! 他にもサプライズゲストが登場するのだが、それが誰かは秘密。
サイモンとニックの作品ということで笑いもふんだん。お下品なギャグも多い。それでも嫌らしくならないのは、生み出される世界の根底に温かみがあるから。何しろ、最後にはジ〜ンと感動もさせられちゃうのだ。
『ショーン〜』『ホット・ファズ〜』そして『宇宙人ポール』。共通項は“映画愛”。そして本作では冒険を通じて、男たちは変化する。恋をし、友情を育み、強くなる。これらはSF映画ファンでなくても十分に楽しめるピース。イケてるポールと冴えないSFオタクの大冒険は、2011年を締め括る最高の1本だ!
ちなみに12月の日本は“サイモン・ペッグ祭り”状態。本作のほかにニックと揃って声優をつとめる『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密』が公開され、『ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル』にも出演中だ。
『宇宙人ポール』は12月23日より渋谷シネクイントほかにて全国公開される。(文:望月ふみ/ライター)
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