小栗旬と岡田将生。見栄えバッチリのふたりが、日本人を代表する宇宙飛行士として登場してくれたら、そりゃあ、カッコ良いよなぁ。と、ミーハー心の芽生えを、まずは抑え込んで……。
『宇宙兄弟』が映画になった。また、人気コミックが原作??と、正直、軽い失望感に襲われもしたが、日本のコミックには面白いネタが詰まっているのも、また事実。累計発行部数750万部を突破している原作コミックを映画化したいと思うのは、製作サイドにとっては自然な流れだろう。とはいえ、本作の場合、原作は17巻を発刊した今なお連載中。つまり、未完のストーリーをひとつの作品に仕上げたワケである。
熱烈なファンには頷けないところも多々あるかもしれない。だが、「膨大な原作の素材を、非常に上手く料理した作品」というのが、筆者の印象だ。本作は、原作そのままのセリフやエピソードを盛り込みながらも、“あるひとつのテーマ”に絞り込むためには多くを削ぐのも止む無し判断し、キャラクターやエピソードを潔くカット。映画版として、きっちりと再構築させている。
さて、映画版はテーマをひとつに集約させた。あるひと組の兄弟の物語として、だ。いつも一緒だった兄と弟。まだ幼かった日のこと、ふたりは偶然、UFOを目撃する。そして「2人で一緒に宇宙に行こう!」と約束を交わした。それから19年後、ツンツン頭がトレードマークの弟ヒビトは見事に宇宙飛行士となり、間もなく月へと旅立とうとしていた。一方、天然パーマの兄ムッタは、弟のことを悪く言われて上司に頭突き。会社をクビになってしまう。そんな時、ムッタのもとに宇宙航空研究開発機構(JAXA)から宇宙飛行士選抜試験の書類選考通過の知らせが届く。それはヒビトが応募していたものだった。
ここから月へと旅立つ弟と、宇宙飛行士になるべく試験に挑む兄との物語が、平行して描かれていく。
コミックが映画になる場合、最も気になるのがキャスティング。小栗&岡田の兄弟コンビは、なかなかのムッタ&ヒビトぶりを披露している。特に、キャラクターを完全に消化してみせたのが小栗。筆者は特別、小栗のファンというワケではない。だが、本作の小栗は、かなりイイ。
弟のことを一番に想い、同時に優秀な弟に対するひけ目を感じ続けているムッタ。自身にも他にない素晴らしい才能が秘められていることに気づいていないムッタ。少々情けない三十路男なのだが、小栗は、彼を非常に親しみやすく、愛すべきキャラクターとして演じている。何より、ただひとりで画面に映し出されてたときの支配力がスゴイ。その表情ひとつで、観客を惹きつける魅力を持っていることに、気づかされる。
兄弟の物語が軸になっていると述べた本作だが、実は小栗と岡田の共演シーンは10分ほど。それにも拘わらず、ふたりの間にはきちんと兄弟としての血が通っている。ちなみに、こちらも重要となってくる、子ども時代のムッタとヒビト。この子役が、ちゃ〜んと小栗と岡田にリンクしているのもスバラシイ。時代の見せ方や、月面での事故後の処理など、物足りなさを感じる部分もあるが、ラストは身を任せ、心地良い気分で劇場を後にしてほしい。
『宇宙兄弟』は5月5日よりTOHOシネマズ 日劇ほか全国東宝系にて公開される。(文:望月ふみ/ライター)
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