【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第29回】
この2ヵ月ほど伊丹十三の『お葬式』『タンポポ』『マルサの女』のDVDが欲しくて街を歩いている。
ネットで注文すればあっという間に届くのだろうが、クレジットカード持ってないし、なんかいろいろよくわからなくてデジタルには頼れない。
誰かに頼めば代わりに買ってくれるんだろうけど、欲しい映画のDVDをお願いするのもなんだかなあと。
そんなこともできないのか? と思われたくないし。
みんな面倒くさいだろうし。
だから店舗で買うことを選んだ。
・【鯉八の映画でもみるか。28】路面電車と松山、そして「伊丹十三という怪物」
店舗で買うというのはなかなか大変な時代。
レンタル屋さんもDVD扱ってる店舗も減少している。
CDが売れない時代だ。
DVDなら尚のこと。
そしてどこにも伊丹十三は置いてない。
なぜだあんなに面白いのに。
あんなに洒落てるのに。
これはまるで宝探しのようだ。
見つけたときの感動を想像しながら今日も街を歩く。
中古屋さんで探すのはやめようとルールを作っていた。
製作側にお金が入らないのが嫌だから。
だが、あまりにも見たくてTSUTAYAに行ってみた。
マルサの女は昨日売り切れたと。
オーマイガー。
意地張ってる場合じゃなかった。
余計に欲しくなった。
そして、いまこの令和に、伊丹十三のDVDを店舗で買ったその人に会いたくなった。
延々と伊丹十三について話ができそう。
できたら今年中に見つけたいと思っている。
誰もプレゼントなどしないでくれ。
この楽しみを奪わないでくれ。
絶対にプレゼントしないでくれ。
正月に餅を食べながら見たいのだ。
そうすればきっと来年はいい年になりそうな気がする。
ちなみに、ウェス・アンダーソンの新作映画『フレンチ・ディスパッチ』が2022年1月28日金曜日に公開だそう。
静岡シネ・ギャラリーで手に入れたチラシも洒落てるぜ。
来年はきっといい年だ。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
プロフィール/瀧川鯉八(たきがわ・こいはち)
落語家。2006年瀧川鯉昇に入門。2010年8月二ツ目昇進、2020年5月真打昇進。落語芸術協会若手ユニット「成金」、創作話芸ユニット「ソーゾーシー」所属。2011年・15年NHK新人落語大賞ファイナリスト。第1回・第3回・第4回渋谷らくご大賞。映画監督アキ・カウリスマキが好きで、フィンランドでロケ地巡りをした経験も。
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