ティム・バートン監督とジョニー・デップ、8度目のコンビ作ということで話題の『ダーク・シャドウ』。1966〜71年まで全米で放送されたテレビシリーズが原作で、当時、若者だったバートンとデップが番組の大ファンだったことから映画化が実現したらしい。200年の眠りからさめたヴァンパイア、異形の恋、廃墟と化したお屋敷など、バートン監督が演出したらそれはそれは素敵だろうな、という要素がいっぱいだ。
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そんなわけでワクワクしながら試写へ行った。ちなみに筆者は当時のテレビシリーズを知らないので、この映画だけを見ての感想になるが、ひと言でいえば面白い。ティム・バートンのアートは健在で(彼の映画を見るといつも、たしか『PLANET OF THE APES/猿の惑星』のスタッフのインタビュー記事か何かで、“ティムは打ち合わせ中によく渦巻きの絵を描いていた”という逸話を思い出す)、ヴァンパイアのバーナバスを演じたジョニー・デップも白塗りメイクで時代錯誤のおとぼけヴァンパイアになりきっている。
なんといっても素晴らしいのが、バーナバスを愛するがゆえに強敵となった魔女アンジェリーク役のエヴァ・グリーンとデップの相性だ。エヴァは旬の美人で、その演技は憎々しくてセクシーで強烈だった。ふつうなら「主役を食っている」と言えるだろう。ところが、デップは控えめな演技でむしろ地味なくらいなのだが、食われてはいない。マイペースで飄々とした存在感が、魔女の体当たりを、役柄的には跳ね返しているのだが、役者としては優しく受け止めている感じがするのだ。この2人のラブシーンは必見だ。下手すればB級映画になるぎりぎりのところで美的にまとめているのは、独特なセンスで知られるバートン監督のなせる技だろう。デップとエヴァなら、大人のラブストリーでも恋人同士を演じられただろうに、もし今後そういう作品で共演したとしても、きっと笑ってしまうだろう。彼らをはじめ、役者たちが自分の役回りを理解して、バートン・ワールドで楽しく演じている感じが伝わってくるのもいい。
本作で、バートン&デップが生みだすファンタスティックで滑稽な世界が健在であることがわかった。余裕すら感じられた。だからこそ、2人の9作目、10作目として、『シザーハンズ』や『スリーピー・ホロウ』のような情緒に強く訴えかけてくる感動作もまた見たいな、と強く思う。
『ダーク・シャドウ』は5月19日より全国公開される。(秋山恵子/ライター)
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