【週末シネマ】裏テーマは映画愛! ナイーブな青春のひとときを描いたキラキラの珠玉作

『シグナル〜月曜日のルカ〜』
(C) 2012「シグナル」製作委員会
『シグナル〜月曜日のルカ〜』
(C) 2012「シグナル」製作委員会

キラッキラの青春映画。大学生が夏休みのバイト先の映画館で出会った映写技師・ルカと過ごすひと夏を描く『シグナル〜月曜日のルカ〜』は、どんよりした大人の目にはまぶしすぎるほどのきらめきを見せる。

[動画]『シグナル〜月曜日のルカ〜』女性限定試写会舞台挨拶

映画初出演にして初主演の三根梓が演じるヒロイン・ルカは、3年前のある事件をきっかけに、映写技師として働く「銀映館」から一歩も外へ出られなくなっている。夏休みだけの臨時バイトで入った帰省中の恵介(西島隆弘)は、支配人から「月曜日はルカをそっとしておく」「ルカとの恋愛は禁止」「ルカの過去について質問してはいけない」という3ヵ条を言い渡された。やがて恵介は、素っ気ない態度だが、仕事は丁寧に教えるルカに惹かれていき、ルカも少しずつ心を開いていく。そんなある日、ルカの過去を知る謎の男・レイジ(高良健吾)が現われて……という展開だ。

デジタル上映が主流になり、フィルム上映というシステムが風前の灯火となった今、地方の古い名画座を舞台に、ヒロインは若い女性の映写技師。彼女と2人の青年の三角関係という設定は、なかなかの変化球ではないか。新潟や長野に実在する古い映画館(現在は通常営業はしていない)でロケ撮影し、館内には邦洋問わず数々の名作のポスターが貼られ、一部映像も登場する。ルカが映写の技術を手ほどきする描写も丹念で、恋愛ミステリーという表看板が掲げられているが、映画愛という裏テーマにこそ、作り手側の相当なこだわりが感じられる。

監督は、『時をかける少女』では仲里依紗、『乱反射』『スノーフレーク』では桐谷美玲を起用し、それぞれの魅力を開花させた谷口正晃監督。演技経験がなかった三根の初々しさを最大限に活かし、清潔感のあるみずみずしい表情を引き出した。ルカへの想いと共に、不甲斐ない父親との間に抱えた葛藤にも苦しむ恵介を演じる西島は抜群の安定感を見せ、高良健吾は恋に暴走する男の狂気を衒(てら)いなく表現する。

映画館から出られず、他者との関わりも極力避けているルカの素敵なショートカットは誰が切ってるの? とか、外に出られないといっても、わりと平気で屋上に出るよね、といった突っ込みどころは山ほどある。ルカが月曜日に憂うつな理由と3年前の事件の真相を明らかにするまでもかなり引っ張るが、拍子抜けするような種明かし。でも、そんなものかもしれない、と思う。他人が呆れるような、はた迷惑なことでも、本人は深刻に悩んでいる。ナイーブな青春のひとときだけの輝きを成分無調整で映画にした。そんな珠玉作だ。

『シグナル〜月曜日のルカ〜』は6月9日より新宿ピカデリーほかにて全国公開される。(文:冨永由紀/映画ライター)

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