『ショーン・オブ・ザ・デッド』『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン!』のエドガー・ライト製作総指揮のエイリアンもの。立ち向かうのは不良グループの子どもたち。『アタック・ザ・ブロック』は、食指が動くに充分な条件がそろっている。
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南ロンドンの低所得者用公共団地。ある夜のこと、帰宅途中の見習い看護師のサム(ジョディ・ウィッテカー)が不良キッズに囲まれ立ちすくんでいると、すぐ横の車に閃光と共に何かが落下した。サムに逃げられたキッズが落下物を確かめようと近づくや、中から飛び出してきたのは見たことのない小さな生き物=エイリアンだった! リーダー格のモーゼズ(ジョン・ボヤーガ)はエイリアンを追い詰め、なぐり殺してしまう。
「ここに落ちてきたのは不運だったな」と勝利を祝うキッズだったが、これはほんの序章に過ぎなかった。ほどなく、光を放つ隕石が空から次々と落ちてきた。花火やバットといった武器を手に、エイリアン狩りへと飛び出していくキッズ。だが待っていたのは、最初のエイリアンよりも遥かに大きく、残虐なそれ。モーゼズたちは、初めて本当の危機に直面していることを知る。
意外にも、といっては失礼だが、なかなか本格的なSF作品である。とはいえ、真っ黒で毛むくじゃらの身体に、光る牙を持つエイリアンが攻撃するのは、アメリカのホワイトハウスでもなければ、ニューヨークといった大都市でもない。ロンドン郊外の“団地”に留まっている。
だがキッズにとっては、“団地”こそ聖地。地球侵略よりも団地侵略のほうが、よっぽど大きな危機。本作はエイリアンの襲来という非日常を投入しつつ、皮肉やユーモアを散りばめた会話やアツい友情、戦いへと向かう様から、今を生きる彼らの姿を浮き彫りにしていく。
エイリアンものとして楽しむつもりが、目はキッズへと向いた。これには、演じた子役たちの好演も大きい。特にリーダー格のモーゼズを演じたジョン・ボヤーガの目ヂカラがたまらない。最初こそ、ただの愛想のない悪がきに見えるものの、途中からは、地球の存亡を担う(正しくは“団地”だけど)英雄デンゼル・ワシントンに見えて仕方がないのだ! 本作で注目を浴びたことで、スパイク・リー監督製作によるドラマシリーズのマイク・タイソン役を掴んだというのも納得の、“顔”をしている。
『アタック・ザ・ブロック』に惹かれる人の多くはエドガー・ライト、もしくはエイリアンというキーワードに反応するだろう。だが、本作の拾いモノは、ミニ“デンゼル・ワシントン”の出現。エイリアンとのバトルに興奮しながら、青田買いをどうぞ。
『アタック・ザ・ブロック』は6月23日より渋谷シネクイントほかにて全国公開される。(文:望月ふみ/ライター)
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