スクリーンで刹那の輝きを放つ美少年、注目若手俳優たちのキャリアを追う
#Summer of 85#シークレット・オブ・モンスター#ジュダ・ルイス#トム・スウィート#バンジャマン・ヴォワザン#フェリックス・ルフェーヴル#ロレンソ・フェロ#映画を彩る美少年・美青年たちの今#永遠に僕のもの#雨の日は会えない、晴れた日は君を想う
【映画を彩る美少年・美青年たちの今 <前編>】
人の美しさとは様々だ。姿形、心、そして時分の花というものもある。大人になる直前、思春期ならではの繊細な美は多くの名作映画で描かれてきた。
ひとときの特別な輝きを映像に残した彼らは、それだけでは終わらずに今も順調にキャリアを重ねている。これからの息の長い活躍を願って、彼らの近況を伝える。
・『Summer of 85』フェリックス・ルフェーヴル インタビュー
フェリックス・ルフェーヴル、バンジャマン・ヴォワザン/『Summer of 85』
1985年の夏、恋に落ちた16歳のアレックスと18歳のダヴィドを描いた『Summer of 85』。1967年生まれのフランソワ・オゾン監督が10代の頃に影響を受けた原作小説の映画化で主人公2人を瑞々しく演じたのはフェリックス・ルフェーヴルとバンジャマン・ヴォワザンだ。シャイなアレックスを演じたフェリックスは本作の演技でリュミエール賞男性新人賞を受賞し、セザール賞でも有望若手男優にノミネートされた。最新作『SUPREMES(原題)』はフランスのラップグループ「Supreme NTM」の伝記映画で、これも1980年代後半が舞台。フェリックスはグループのマネージャー、セバスティアン・ファランを演じている。
ダヴィドを演じ、フェリックスとともにリュミエール賞男性新人賞を受賞したバンジャマンは、フランス映画として初のAmazonオリジナル作品『社会に虐げられた女たち』で、特殊能力を持つというだけの理由で精神病院に送られたヒロインの弟役を演じた。フランスでは今年、文豪バルザックの「幻滅」を映画化した主演作『Illusions perdues(原題)』が公開され、グザヴィエ・ドランや名優ジェラール・ドパルデューと共演している。今後は名匠アンドレ・テシネ監督の『Les pieds sur terre (原題)』が控え、こちらでは『燃ゆる女の肖像』のノエミ・メルランと共演予定だ。
トム・スウィート/『シークレット・オブ・モンスター』
サルトルの「一指導者の幼年時代」をインスピレーションに、第一次世界大戦直後のフランスに派遣されたアメリカ人男性の息子で、不可解な行動で大人たちを悩ませる少年が独裁者と変貌していくミステリー映画『シークレット・オブ・モンスター』。長めの髪や服装から、女の子に間違えられることもある美少年の隠された恐るべき本性を次第に明かしていく難役を演じたのは、これがデビュー作だったイギリス出身のトム・スウィート。イースト・ロンドンでスカウトされて、主演に抜擢された時は9歳。両親と一緒に下校中、オーディションを受けないかと声をかけられたという。
2017年には、キット・ハリントン主演のTVミニシリーズ『ガンパウダー』でキットが演じた17世紀英国で起きた火薬陰謀事件の首謀者、ロバート・ケイツビーの少年時代を演じた。2018年には『くるみ割り人形と秘密の王国』でマッケンジー・フォイが演じた主人公クララの弟フリッツを演じ、『16歳、戦火の恋』にも出演。その後も日本未公開作2本に出演。2021年にも19世紀フランスを舞台にしたホラー・ファンタジー『Eight for Silver(原題)』や短編映画『Wildflowers(原題)』などに出演。主演を務めた後者では成長した姿を見せている。
ロレンソ・フェロ/『永遠に僕のもの』
1971年にアルゼンチンで起きた連続殺人事件をもとにした『永遠に僕のもの』(18年)で、犯人である17歳の美少年カルリートスを演じたロレンソ・フェロ。父親のラファエル・フェロはアルゼンチンの有名俳優という2世セレブは19歳(当時)にして、自信と妖しい魅力に満ちた存在感を放ち、デビュー作にして主演という大役をこなした。
作中ではカールした髪に潤んだ瞳で憂いある風情だが、2019年に映画のプロモーションで来日した際は、ポケモンなど日本のゲームやポップ・カルチャーが好きな素顔を披露。Kiddo Toto名義でラッパーとしても活動している彼は、東京の街に繰り出してミュージックビデオも撮影した。(https://www.youtube.com/watch?v=4dVbblLYis4)
ハバナ映画祭主演男優賞などを受賞した後のキャリアも順調で、アルゼンチンのTVシリーズ『El Marginal(原題)』シーズン3に主要キャストの1人として出演した後、Netflixで配信中のシリーズ『ナルコス:メキシコ編』シーズン3で、麻薬組織の若い子分の1人を演じている。
ジュダ・ルイス/『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』
ジェイク・ギレンホールが、最愛の妻を亡くした主人公を演じる『雨の日は会えない、晴れた日は君を想う』(15年)で父親とともに喪失の悲しみを乗り越えようとする息子を演じたジュダ・ルイス。当時14歳だった彼は、同年に行われていた『スパイダーマン:ホームカミング』で主演候補の最終選考の6人の1人となったことでも知られる。主人公ピーター・パーカーに選ばれたのはご存知の通りトム・ホランドだが、ジュダは当最年少候補だった。
両親のやっている劇団で4歳の頃から演じていたジュダは、『雨の日は~』で脚光を浴びた後は精力的に活躍を続けている。
キアヌ・リーヴスが主人公ジョニー・ユタを演じた『ハートブルー』(91年)のリメイク作『X-ミッション』(15年)ではユタの少年時代を演じ、コメディホラー『ザ・ベビーシッター』(15年)にも出演。2017年に同作がNetflixで配信されると人気を博し、『ザ・ベビーシッター キラークイン』(20年)にも出演。2018年のコメディ『クリスマス・クロニクル』も続編が製作される人気シリーズとなった。『サマー・オブ・84』(18年)や『フロッグ』(19年)などホラーやスリラー作など、娯楽作を中心に着実なキャリアを築いている。絵が得意で、インスタにはしばしば自作をアップ。最近は宇宙をテーマに幻想的な作品をアップしている。(文:冨永由紀/映画ライター)
※<後編>は12月29日に掲載予定です
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