朝鮮半島の“38度線”を飛び越え、ソウルとピョンヤンを行き来する謎の運び屋の壮絶な旅を通じ“分断国家の今”を描いた韓国映画『プンサンケ』。製作総指揮と脚本を世界三大映画祭を制した韓国の鬼才キム・ギドクが手がけ、彼が発掘した気鋭の若手チョン・ジェホンが監督した衝撃作だ。監督は、ギドクらしい狂気すれすれの物語をテンポあるエンターテインメントに作り上げ、韓国でもヒットを記録した。
38度線で人々が隔てられる不条理な現実を、痛烈な皮肉と共に映像化したジェホン監督が来日した際、今なお戦争中にある母国への思いなどを語ってもらった。
幼い頃からアメリカに暮らし、オーストリアへの留学経験もある35歳のジェホン監督。戦争が嫌いだと言う彼に、南北統一はどのようにしたら実現すると思うかと聞くと「対話です」と断言。「南の人は北の人を知らないし、北の人も南の人を知らない」と言い、対話によりお互いのことを知ることが、統一への第一歩だと考えていると説明した。
そんな彼に、「それはあなたのような若い人たちだけの考えなのでは?」といじわるな質問をしてみたところ、「韓国の若い人は、みんな戦争をいやだと思っている」と話した上で、「でも、それは年齢や性別に関係なく、みんなが感じていることだと思うんです」と付け加えた。
また、昨年末、北朝鮮の指導者が金正恩へと替わったことへの感想を聞くと、「戦争はまだ終わっていないので、交代により良い方向へと変わっていけばいいと思う」と期待を口に。
実は今まで母国が戦争中という認識が薄かったそうだが、一昨年起きた延坪島への北朝鮮の砲撃事件により、戦争を強く意識したという。「この映画の撮影中に攻撃を受けたのですが、撮影場所に近かったこともあり、あのとき初めて『戦争中なんだ』と実感しました。あの時期は韓国のすべての映画で火薬を使うことができず、僕も銃のシーンを書き直しました」と、自作へも少なからず影響があったことを明かしていた。
『プンサンケ』は8月18日よりユーロスペースほかにて全国順次公開される。
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