低迷期から復活!? 初代スパイダーマン、トビー・マグワイアの過去とこれから
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『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』の大ヒットで再注目
【この俳優に注目】トビー・マグワイア
世界累計で17億4000万ドル(2022年1月現在)の興収を記録し、大ヒット中の『スパイダーマン:ノー・ウェイ・ホーム』で再び注目が集まっているトビー・マグワイア。この数年間、俳優としてはほぼ休業状態だったが、ようやく重い腰を上げてくれそうだ。
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2014年に『完全なるチェックメイト』に主演して以来、『ボス・ベイビー』(17年)に声の出演をした他はプロデューサー業に専念してきた彼は今年、最新作『バビロン』の公開が控えている。『ラ・ラ・ランド』(16年)のデイミアン・シャゼル監督が、映画がサイレントからトーキーへと移行した1920年代のハリウッドを描く大作で製作総指揮を務め、俳優として出演もしている。
ブラッド・ピットがサイレント映画の2枚目俳優をモデルにした主人公を演じ、マーゴット・ロビーが当時実在の大スター、クララ・ボウを演じる同作でトビーはどんな役で登場するのか、期待は高まるばかりだが、今年12月に予定される公開を待ちながら、彼の歩みを振り返ってみよう。
46歳になった今も少年のような柔らかな微笑みは健在
2002年『スパイダーマン』でピーター・パーカー/スパイダーマンを演じて以降の活躍はよく知られているので、ここでは大ブレイク以前の彼について紹介したい。
トビーは1975年生まれで現在46歳。ピーター・パーカーを演じた俳優として最年長記録を作ったことになる。『スパイダーマン』第1作でヴィランのノーマン・オズボーン/グリーン・ゴブリンを演じた当時のウィレム・デフォーと同年齢になったというと、時の流れを感じずにはいられない。
だが、久々に姿を見せた彼の柔らかな笑顔には相変わらず少年のような表情がある。そういえば、90年代後半にアン・リー監督やラッセ・ハルストレム監督などのアート系映画に出演していた20代半ばのトビーにも、若さと老成した魂が共存する年齢不詳の魅力があった。
複雑な生い立ちとレオナルド・ディカプリオとの友情
どこにでもいそうな人物の知られざる一面、内に抱える葛藤を巧みに演じるのは、その複雑な生い立ちの影響もありそうだ。
トビーが誕生したとき、母親は18歳、父親が20歳の若さで、両親は彼が2歳の時に別れてしまった。両親の家を行き来し、親戚の家に預けられることもあった幼少期を経て、トビーは母親に勧められて演技を学び、1989年から子役として活動を始めた。
かつて俳優の仕事に憧れていた母の夢を託された形でキャリアがスタートし、TVやCMに出演する中で、オーディション会場でよく顔を合わせ、友だちになったのがレオナルド・ディカプリオだ。
レオはかつてEsquireのインタビューで、トビーとの出会いのエピソードを披露したことがある。
母親が運転する車の中から路上にいたトビーを見つけたレオは「車から飛び出して『トビー! トビー!』って呼んだら、彼は『ああ、君のこと知ってるよ。君は……あの人だよね』という感じで」とトビーのちょっと腰の弾けた様子を明かしつつ、「でも彼を友人にしたんだ。誰かを自分の友だちにしたいと思ったら、僕はその人たちを自分の友だちにしてしまう」と語った。
『ボーイズ・ライフ』(93年)で共にオーディションに参加した際は、主役の少年にレオが選ばれてトビーは別の役で出演して映画デビューした。役を競うライバルながら、それ以上に意気投合した2人は、他にもルーカス・ハースなど同年代の若手俳優たちと公私ともに気の合う仲間の輪を広げていった。
『サイダーハウス・ルール』の主役を務め『スパイダーマン』で大スターに
レオは19歳にしてアカデミー助演男優賞候補になった『ギルバート・グレイプ』(93年)や、『タイタニック』(97年)に主演し、殊に後者の記録的大ヒットで若くして大スターになった。同時期にトビーはアルコールに溺れ、自ら出演作を降板するなど、苦悩の日々を送ったこともあったが、普通の男の子然とした佇まいと繊細な演技はアート系作品の映画人に注目され、1997年にアン・リー監督の『アイス・ストーム』に出演し、『ギルバート・グレイプ』のラッセ・ハルストレム監督は1999年の『サイダーハウス・ルール』の主役にトビーを起用した。
当時企画進行中だった『スパイダーマン』では、ディカプリオやジュード・ロウ、故ヒース・レジャーらがピーター役候補だったが、『サイダーハウス・ルール』を見たサム・ライミ監督の第一候補はトビーだったという。
笑顔に静かな哀愁が漂うトビーとエモーショナルな熱演が魅力のレオは、俳優として各々の個性を確立し、友情は30年近く変わらない。『華麗なるギャツビー』(13年)でも共演した2人は羽目を外して遊ぶこともあれば、夜通し演技論を語り合う。今や役柄が競合することもない。ただ、これはあくまで私見だが、レオが「この人が本気を出したら恐い」と考えるのは誰かといえば、それはおそらくトビーではないだろうか。
『アメイジング・スパイダーマン』シリーズのアンドリュー・ガーフィールドはラジオ番組出演時に「あの役を演じるトビーに憧れながら育った」「俳優としての彼のファン」と語り、『~ノー・ウェイ・ホーム』でトビーとアイディアを出し合った共同作業について、「とても遊び心があって、まるで友だち2人でスパイダーマンの短編を作りながら『これってクールじゃない?』と言っている感じだった」と言い、しばらく演技から離れていたトビーが「まるで昨日のことのように、演技との関係、演技への愛情を思い出し始めたんだと思う」と語っている。
再び表舞台に姿を見せたトビーは先日、レオとともに子役時代からの友人であるルーカス・ハースとハリウッドで夜のお出かけを目撃された。ルーカスは『バビロン』にも出演している。長い7年余りだったが、今年はファンが待ち望んだ俳優トビー・マグワイアの復活を楽しみたい。(文:冨永由紀/映画ライター)
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