紛争地の治安を守り続ける女性たちを映し出した『国境の夜想曲』本編映像公開
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クルド自治区の治安を守る「ペシュメルガ」の日常とは
『ローマ環状線、めぐりゆく人生たち』(13年)『海は燃えている~イタリア最南端の小さな島~』(16年)でベルリン、ヴェネチアを2作連続でドキュメンタリー映画で初めて制した名匠ジャンフランコ・ロージ監督の最新作『国境の夜想曲』が現在、全国で公開中だ。この度、紛争地の治安を守り続ける「ペシュメルガ女性部隊」の日常を映し出した本編映像が公開された。
『国境の夜想曲』はジャンフランコ・ロージ監督が3年以上の歳月をかけて、イラク、シリア、レバノン、クルディスタンの国境地帯で撮影した。
ここでは2001年の9.11アメリカ同時多発テロ、10年のアラブの春に端を発し、最近ではアフガニスタンからの米軍撤退と、今に至るまで侵略、圧政、テロリズムにより、数多くの人々が犠牲になっている。
同作の舞台となる中東。その紛争地域に国家とは認められていないが実質的にクルド人が暮らすイラク北部クルド自治政府が存在する。
そのクルド自治政府が統括する武装部隊が「ペシュメルガ」である。クルド語で「死と対峙する者」を意味し、強力な装備と練度の高さから、戦闘力は一国の軍隊に匹敵するとされる。兵力は約22万人とも言われ、クルド自治区の治安維持を担う。
03年のイラク戦争では米国を支援し、クルド人を弾圧していたイラクのフセイン政権を崩壊に導いた。
その女性兵士たちはなぜ、武器を取ったのか
そのペシュメルガには女性部隊がある。家族や友人をISISによって失い2度と同じことを繰り返さないために戦う者や、家族がすでに武装部隊として活動しており自然な成り行きとして参加する者など様々だ。
同作では女性たちが大きな武器を持ち警備にあたる様子や、武器の手入れをし、束の間の休息にひとつの暖房とやかんを囲み暖を取り、体を寄せ合って眠るなどの日常が記録されている。やかんにかざす手の中には左手の薬指に指輪をしている者もいる。
また、撮影時のオフショットとして、ロージ監督を囲む女性兵士たちの写真も公開された。移動のバス内で撮られたもので、ぎこちない笑顔ながらも監督と兵士たちの間に和やかな関係が生まれたことを感じさせる貴重な一枚だ。
14年にイラク北部での支配地域を拡大し、「イスラム国」という国家の樹立を宣言したISISとの戦闘が始まり、クルド自治区に攻め入ってきたISISと対峙する形がいまも続いている。
19年、アメリカにより当時のIS指導者アルバクダディが殺害され、弱体化したかに見えたが、すぐに次なる指導者を擁立。しかし、その指導者アブイブラヒム・ハシミ・クライシも今月3日に米軍の急襲により自爆死を遂げた。
アメリカ政府はこの作戦により、「おぞましいテロリストはこの世を去った。我々は世界中のどこであろうとテロリストたちを追い詰める」と話すが、果たしてクルドの人々にとって、安住の日はやってくるのだろうか?
日本に暮らす我々から想像もできない、女性兵士たちの姿が、この映像から垣間見える。
『国境の夜想曲』は現在、全国で公開中だ。
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