【落語家・瀧川鯉八の映画でもみるか。/第31回】
Netflixオリジナルドラマ『不機嫌な人々』を見ました。
30分×6話でサクッとあっという間。
このくらいがいいかもしれませんこれからは。
120分の映画は長いかもしれない。
そのくらいの尺で作らないと興行として成立しないからって制約に縛られているような気がします。
短いからもっと足そうとか、長すぎるから削りましょうとか。
面白いものを見てもらいたいのに本末転倒というか。
とにかく見やすくてよかったです。
・【鯉八の映画でもみるか。】サヨナラ2021ヨロシク2022
見やすいのが善ってことではないんだけど、多くの人に楽しんでもらうには見やすくないと見向きもされないのが現実。
それはいまの時代に限らず大昔からそうだったと思う。
千年前の朝から晩まで野良仕事してた人が本なんて読まないし読めないよヘトヘトで。
二宮金次郎は特別。異質。
とにかくみんな毎日ヘトヘトなんだから。
泣きたくなるくらい疲れてるんだから。
毎日ヘトヘトになって頑張ってる人に楽しんでもらうのが娯楽の役割なんじゃないかな。
『不機嫌な人々』はスウェーデンのドラマ。
北欧の映画もドラマもずいぶん人気みたいで。
上質なのが人気の秘密だそう。
教育の水準も高いんですよね北欧というのは。
寒い土地だから、映像の色彩感覚とかやっぱり独特で。
インドとか南米とか、イタリアとかスペイン、ハリウッドとは暖かいところと色がもう全然違う。
「重い青」なんです。
空が低い気がする。
みんなあまり表情もないしね。
寒いんだなあとわかる。
銀行強盗に失敗したマヌケな犯人がアパートの内覧会に来ていた8人を人質に立て籠もるとこから始まる。
どこかすっとぼけた親子の警官が解決に奔走する。
やっとこさ人質が解放されてアパートに踏み込むが犯人の姿が消えていた。
さあどういうことなんだというミステリーなんだけど、コメディドラマでもある。
とにかくそこまで緊迫感がないし、ほのかなユーモアで終始ほっこりしてる。
このくらいの温度がいいんだよ仕事終わりに鑑賞するのは。
話ごとに人質8人それぞれの過去が丁寧にシンプルに描かれていき、また不思議な絡み合い方をしてくる。
でも全然複雑じゃない。
これくらいの絡み合いは普通の生活でもありそうというか。
完璧な伏線が張られた物語で感心したいわけじゃないっていうか。
すごいねって言いたいわけじゃないんだよこっちは。
毎日ヘトヘトなんだから。
登場人物もみんなそれなりに生活が苦しい人たちで。
でも最後はハッピーエンドで。
人情が勝ったというか。
優しさの勝利というか。
誰かの優しさや親切が、もしかしたら誰かのためになってると思えるだけで生きていく力になるというか。
落語みたいなとこあって。
最後は都合いい感じになってるかもしれないけど、とにかくぼくはハッピーエンドを求めてる。
年を重ねれば重ねるほどハッピーエンドが欲しくなる。
その難しさを知ってるからだろうね。
『不機嫌な人々』ぜひご覧ください。
湯たんぽみたいなドラマです。
※【鯉八の映画でもみるか。】は毎月15日に連載中(朝7時更新)。
瀧川鯉八(たきがわ・こいはち)
落語家。2006年瀧川鯉昇に入門。2010年8月二ツ目昇進、2020年5月真打昇進。落語芸術協会若手ユニット「成金」、創作話芸ユニット「ソーゾーシー」所属。2011年・15年NHK新人落語大賞ファイナリスト。第1回・第3回・第4回渋谷らくご大賞。映画監督アキ・カウリスマキが好きで、フィンランドでロケ地巡りをした経験も。
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