不世出の天才シンガー、ビリー・ホリデイとアメリカ合衆国の対決…その知られざる全貌を明かすサスペンス・エンターテイメント『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』が公開中。ムビコレでは、リー・ダニエルズ監督のインタビューを掲載している。
・『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』リー・ダニエルズ監督インタビュー
黒人の歴史を知っているつもりでしたが、知らなかった
「ビリー・ホリデイを止めろ! 彼女の歌声が人々を惑わせる」。1940年代、人種差別の撤廃を求める人々が、国に立ち向かった公民権運動の黎明期。アメリカ合衆国政府から、反乱の芽を叩きつぶすよう命じられたFBIは、絶大なる人気を誇る黒人ジャズ・シンガー、ビリー・ホリデイにターゲットを絞る。大ヒット曲「奇妙な果実」が運動を扇動すると危険視し、黒人の捜査官ジミー・フレッチャーをおとり捜査に送りこんだのだ。だが、逆境に立てば立つほど、ビリーの華麗なるステージは輝きを増し、肌の色や身分の違いを越えて全ての人を魅了する。やがてジミーも彼女に心酔し始めた頃に、FBIが仕掛けた罠とは? そしてその先に待つ陰謀とは──?
これまでにも、7人の米国大統領に仕えた黒人執事の実話をもとにした『大統領の執事の涙』(14年)など、社会派の深刻なテーマをエンターテイメントへ昇華させてきたダニエルズ監督。脚本家であるスーザン=ロリ・パークスから本作の脚本を受け取ったとき、衝撃を受けたという。「私は黒人の歴史を知っているつもりでしたが、実はビリー・ホリデイについてのことは知りませんでした。そして、彼女が『奇妙な果実』を歌ったためにアメリカ政府がいかに彼女をターゲットにしたかというストーリーを知らなかった」。
そして、「『奇妙な果実』の歌詞を聴いて、誰もそんなことをすることができなかった時代に、政府に立ち向かったこの女性を思った時に彼女はヒーローだと思いました。キング牧師やマルコムXよりも前に、アメリカの公民権運動の先駆けだったんです」と、本作を作る決意をしたと話す。
なぜ“今”このテーマを取り扱おうと思ったのか。その理由について、ダニエルズ監督はこう語る。「『大統領の執事の涙』では、私は希望を感じていました。オバマが大統領になり、私は希望を感じていました。あの映画をご覧になった方は、最後に執事がレッドカーペットを歩いてオバマ大統領に会いに行くのですが、黒人初の大統領ということを考えるとゾクゾクしますよね。でも、今は希望に満ちた瞬間はありません。この題材に惹かれたのは、私たちが今、危機に直面しているからです。アメリカはかなり混乱していることは明らかで、もうそれを隠すことすらできません。最近の出来事が、まさにそれを証明していると思います。私たちは分断され、ひとつではない。そして、それは醜いことです。だから、『ザ・ユナイテッド・ステイツvs.ビリー・ホリデイ』は私たちが今置かれている時代を物語っています。今こそ声を上げようと呼びかけているのです」。
インタビューではほかにも、ダニエルズ監督がビリー・ホリデイ役にアンドラ・デイを起用した経緯や、アメリカの黒人の映画製作者が20年前と比べどう変わったかについても語られている。リー・ダニエルズ監督のインタビュー全文はこちらから!
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