山田洋次監督が初めてラブストーリーに挑んだことも話題の『小さいおうち』。山田監督にとって82作目となる本作の製作会見が4月15日に東宝スタジオで行われ、監督のほか、松たか子、黒木華、片岡孝太郎、吉岡秀隆、妻夫木聡、倍賞千恵子が登壇した。
中島京子原作の直木賞受賞作を映画化した本作は、東京郊外の“小さいおうち”で起こった小さな恋愛事件の真実を、昭和と平成、2つの時代を通して描いた意欲作。3月1日にクランクインし、現在は約3ヵ月に及ぶ撮影の真っ最中で、昭和パートの撮影が行われている。
昭和パートに出演し、小さいおうちに住む平井家の奥様・平井時子を演じた松は「とても楽しく濃い撮影が半分を過ぎましたが、まだ何か起こるんじゃないかという予感のなか、頑張っております。現代(平成パート)のみなさんに想像をふくらませていただけるような時子を目指しています」と挨拶。
平井家の女中タキ役の黒木は「いいバトンを(晩年のタキを演じる)倍賞さんにお渡しできるように、日々、頑張りたいなと思います」と話し、バトンを受ける倍賞は「昭和時代のタキさんが、いいバトンを渡してくださるようなので、私はそのバトンを落とさないよう、妻夫木君と一緒に平成の時代のタキ役として、頑張りたいと思います」と話した。
また、ほとんど映画の経験がないという歌舞伎役者の片岡孝太郎は「まして今は歌舞伎座がオープンの時期。歌舞伎に出演していなくていいのかなと思いましたが(笑)、山田監督からお話をいただき、こんなに光栄なことはないと思い、参加させていただきました」とコメント。
一方、『隠し剣 鬼の爪』以来9年ぶりに山田組に戻ってきた吉岡は「何も変わっていないことに驚いています。唯一、変わったのは、大船の撮影所ではなく、東宝スタジオで撮っていることくらい。不思議だなと思うのは、(東宝の)第9スタジオに入っても、山田組の匂いなんですよね」と語り、『東京家族』に続いて山田監督作品に出演することになった妻夫木は「2年続けて山田監督作品に出演させていただけることはすごく光栄。前回、監督の愛情たっぷりの演出を受けて、人間として成長させていただけたので、今回も監督の愛をいっぱい受けながら成長できたらと思ってます」と語った。
そうしたなか、デジタル全盛時代にフィルムで撮影する思いを尋ねられた山田監督は「その問題については、この1〜2年どんなに悩んだかわかりません」と切り出すと、「デジタル化によって映画の表現が豊かになったのか?という問題ですよね」と問題提起。
映画は音がついてトーキーと呼ばれ、カラーになるなど発展を遂げてきたが、「そういう次元の発展ではなく、デジタル化はむしろ、合理化なんじゃないかという気がしてならない」とコメント。合理化によって現場がどんどんデジタル化され、フィルム生産が減っていく現状に対して「フィルムで育った人間としては腹立たしく思えてしょうがない」と思いを口にした。
その上で「デジタルにしようかフィルムにしょうか、どちらかを選べる状態ではどうしていけないのか」と自身の考えを述べると、「僕自身、生きているうちはフィルムを使って、フィルムで編集してきた編集技師、録音技師たちと一緒に仕事をしていきたいと思っています」と結んだ。
『小さいおうち』は2014年1月より全国公開となる。
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