ハビエル・バルデム×エル・ファニングが初共演を果たしたことでも話題の『選ばなかったみち』が、今週末より公開された。サリー・ポッター監督の実体験に基づき、父の幻想と娘の現実を描いた問題作で、ムビコレでは、監督インタビューを掲載中だ。
「心の病気を悲劇として描くのではなく、違った視点で描ければ」
ニューヨークに住むメキシコ人移民レオは作家であったが、認知症を患い、誰かの助けがなければ生活はままならず、彼を介護する娘モリーやヘルパーとの意思疎通も困難な状況に。ある朝、モリーが病院に連れ出そうとアパートを訪れる……そこからの24時間を描いた物語である。人生の岐路で自分の選んだ道は正しかったのか、もしも別の選択をしていたら? 胸の奥底にしまい込んだ過去の大切な出来事や記憶を繋ぎながら、人生の奥深さに迫る感動作だ。
「このストーリーは、若年性認知症を患った弟の傍らにいた時に感じたことをもとにしています。彼の目をのぞき込むと、どこか別のところへ行き、心の奥では何かを体験しているようでした。別の現実へ自由に出入りする能力を持っているのではないかと思えました」と語るポッター監督。本作では、彼女が脚本も手がけている。
「彼が闘病しているのを近くで見ているのはとてもつらいことでもありましたが、学んだことや経験したこともあります」と振り返る監督。本作を作った理由について、「その頃に見たことがどんなものだったのかを改めて考え直していた時に、ひとつのストーリーとして形にしたいと思うようになりました。心の病気を悲劇として描くのではなく、違った視点で描ければという思いがあったんです」と明かした。
主人公である父レオを演じたのは、スペイン人俳優であるハビエル・バルデムだ。「ハビエルがレオを演じることになり、アメリカに住むメキシコ人を演じてもらうことは素晴らしいアイデアだと思いました。メキシコとの国境が大きな問題となる中でアメリカの真の姿を描けるのではないかと思いました。この映画にはたくさんの境界線が交差しています。それは、個人、国と国、父と娘、男女、異なる人種の人間関係にまで及んでいきます。つまり、様々な境界線によって世界は成り立っているということを描きたいと思ったのです」。
さらに、ポッター監督は「存在感がとても強いので、逆に男性の弱さを追い求めることができ、相反する緊迫感を作り上げることができます」とハビエルのカリスマ的な存在感についても絶賛した。
また、娘のモリーを演じたエル・ファニングとは『ジンジャーの朝 ~さよなら、わたしが愛した世界』(13年)に続くタッグだ。そんなエルの魅力を、ポッター監督は「エルは、彼女が直接経験していない人生を歩む人物を演じ切る並外れた能力を持っています。それに、精神的にオープンで、自身をコントロールできる。例えばシーンの始めで感情をさらけ出した後に、再び心の扉を閉じて、笑い声を上げたり、クスクスと笑ったりすることができるのです。彼女がトラウマをさらけ出すシーンを撮影した後に、「は〜、気分がすっきりした!」なんて言って驚かされることが多かったです」と語った。
最後には、「脚本の執筆中、私はこの映画を、人生の奥深さに迫る作品にしようと考えていました。悲しい場面もありますが、一筋の光を差し示せればと思いました。観客の皆さんには、レオの物語を通して、複雑で神秘的な自分の人生を追い求めてもらえたらと願っています」とこれから作品を見る人へメッセージを送ったポッター監督。
インタビューではほかにも、ストーリーやキャラクターについても詳しく語られている。サリー・ポッター監督のインタビュー全文はこちらから!
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