50年前のアイルランドで“ロックダウン”経験? パンデミックの時代を生きる私たちに監督が伝えたい思いとは

#ケネス・ブラナー#コロナ#ジュード・ヒル#パンデミック#ベルファスト

(C)2021 Focus Features, LLC.
(C)2021 Focus Features, LLC.

激動の時代にゆれる「家族」と「故郷」を描いた笑いあり、涙ありの人生賛歌『ベルファスト』が、325日より公開。ムビコレでは、ケネス・ブラナー監督のインタビューを掲載中だ。

・『ベルファスト』ケネス・ブラナー監督インタビュー:愛と笑顔と興奮に満ちた日常から一変、激動の時代に翻弄される故郷

ベルファストの激動の時代は「現代のパンデミックにも通じるものがある」

 本作品は、北アイルランド・ベルファスト出身のブラナー(製作・監督・脚本)が、自身の幼少期を投影した自伝的作品。9歳の少年バディの目線を通して、愛と笑顔と興奮に満ちた日常から一変、激動の時代に翻弄され様変わりしていく故郷ベルファストを克明に映し出す。

 「あの午後、スローモーションのように世界がひっくり返る瞬間を見た。聞いたことのない音がして振り返ると、向こうに暴徒の姿が見えた。その瞬間から、世界は永遠に変わってしまったんだ」。1960年代の終わり、自身が経験したベルファストの激動の時代についてこう振り返るブラナー監督。

 それから50年の歳月が経った後、ブラナー監督は本作の脚本を書き始める。きっかけは現在進行形で起こっている“転換期”、コロナ禍だった。「ストーリーを練っているうちに、これは困難に直面し選択を迫られた一家の物語というだけではなく、ある種の“ロックダウン”を描いた物語でもあるということに気がついた。街の通りはバリケードで封鎖され、規制が厳しくなっていく中で、一家は街に留まるべきか去るべきかの選択を迫られる。行動が制限され、自身と家族の身を案じることを強いられた現代のパンデミックにも通じるものがあるんだ」。

 コロナ禍の中で始まった映画制作は、制約も多い反面、「外との接触が絶たれたことで、本作品に必要な家族の絆がすぐに形成されたことは、メリットの1つだった」とブラナー監督は話す。

本作に登場する役の中でも、ブラナー監督が最も需要性を感じていたのが、9歳のバディの存在だ。「彼の物の見方、そして想像力はこの映画の要となっている。本編の中で『子どもじみたことはしまい込め』と言う大臣のセリフが登場するが、私は子どもらしさを捨てざるを得ない瞬間を演じる子役の姿に、いつも感動させられてきた」とブラナー監督。

 そんなバディ役には、本作品が長編映画デビューとなったジュード・ヒルを抜擢。今にも開花しそうな才能を感じさせつつ、サッカーが好きな“普通”の子どもであったジュードを、「何にでも柔軟な対応ができ、カメラの前でも自然体だったから、これが初めての映画だなんて信じられなかったよ」と絶賛した。

 過激さは違えども、今コロナ禍という転換期を経験している人々に、「ベルファストの魂と生命力、そして人生を明るくしてくれるようなユーモアを感じ取ってもらえることを願っている。この街の喜びや悲しみ、一家が経験する出来事を見て、親近感を覚え共感し、他者の人生を見つめることで、私たちは独りじゃないんだと感じてほしい。この映画を見て、そんなふうに感じてもらえたら本当にうれしく思う」とメッセージを送ったブラナー監督。ケネス・ブラナー監督のインタビュー全文はこちらから!