いまさら聞けないアカデミー賞豆知識/女性、非白人の台頭 多様性推し進めた成果が現る
#アウンジャニュー・エリス#アカデミー賞#アリアナ・デボーズ#シアン・ヘダー#ジェーン・カンピオン#トロイ・コッツァー#多様性#濱口竜介
濱口竜介監督、ろう者俳優トロイ・コッツァーらが候補
2016年の第88回アカデミー賞で俳優部門の候補が白人のみだったことに批判の声が上がり、それを受けて賞を主催する映画芸術科学アカデミー(AMPAS)は投票権を持つ会員構成の改革を打ち出した。
2020年までに女性や非白人といったマイノリティの会員数を倍に増やすとして、AMPASは毎年新たな会員を招待してきた。パンデミックが収束しつつある2022年の第94回は、その成果がうかがえる多様性あるノミネーションとなった。
今回、助演男優賞の本命と目されるトロイ・コッツァー(『コーダ あいのうた』)は35年前に史上最年少の21歳で主演女優賞を受賞したマーリー・マトリン(『愛は静けさの中で』)に続いて、ろう者として2人目のオスカー候補になった。奇しくもマトリンとは『コーダ あいのうた』で夫婦を演じている。
前哨戦で助演女優賞をほぼ総なめ状態のアリアナ・デボース(『ウエスト・サイド・ストーリー』)アフロ・ラティーノ系として史上初のオスカー候補となった。また、『キング・リチャード』のアウンジャニュー・エリスも助演女優賞にノミネートされ、2018年に続いて助演女優部門でアフリカ系が2人候補となった。
主演女優賞は今回は白人のみだが、主演男優賞では『キング・リチャード』のウィル・スミスと『マクベス』のデンゼル・ワシントンが候補になり、スミスは最有力候補とされている。
俳優部門のノミネーションはなかったものの、濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』が作品賞にノミネートされたのは、日本映画初であるのと同時に、『パラサイト 半地下の家族』(ポン・ジュノ監督)と『ノマドランド』(クロエ・ジャオ監督)に続いてアジア系監督の作品が3年連続で候補になる快挙も果たしている。
同作がノミネートされた国際長編映画部門では、初めてブータンの作品『ブータン 山の教室』が候補となり、ハリウッドがさらに広い世界へと目を向けるようになったことがうかがえる。
最多12ノミネートの『パワー・オブ・ザ・ドッグ』のジェーン・カンピオン監督は女性として史上初の2度目のノミネートとなった。
エンターテインメント情報サイト「DEADLINE」によると、現在の正会員総数は10,487名で、投票資格のある会員は9,487名だという。改革を図りつつも、現時点では依然として白人男性の会員数が多く、AMPASによると2020年現在、女性は33%(2015年は25%)、非白人は19%(2015年は10%)となっている。
22日(現地時間)に会員による投票は締め切られ、27日(現地時間)の結果発表を待つばかりだ。前哨戦で連勝を続けた『パワー・オブ・ザ・ドッグ』が本命視される中、作品賞のゆくえを占う上で重要な第33回アメリカ製作者組合(PGA)賞映画部門の作品賞を『コーダ あいのうた』が受賞した。
過去32本のPGA賞受賞作のうちオスカー作品賞も受賞したのは22作。昨年の『ノマドランド』もPGAを受賞している。オスカー・レース最終盤で最有力候補となった『コーダ あいのうた』のシアン・ヘダー監督も女性であり、『パワー・オブ・ザ・ドッグ』とどちらが受賞しても、女性監督による配信作品(日本は劇場公開中だが、アメリカではApple+で配信)ということになる。
実は配信作品がアカデミー作品賞を受賞したことはまだない。劇場公開する映画という伝統を守り続けてきたアカデミーが、最高賞に選ぶのはどの作品なのか。例年以上の注目が集まっている。
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