いまさら聞けないアカデミー賞豆知識/主演女優賞は誰の手に? 最も行方が読めない混戦状態
#アカデミー賞#オリヴィア・コールマン#クリステン・スチュワート#ジェシカ・チャステイン#ニコール・キッドマン#ペネロペ・クルス#主演女優賞
ダイアナ妃役、クリステン・スチュワートが初ノミネート
濱口竜介監督の『ドライブ・マイ・カー』4部門ノミネートで例年以上に注目が集まる第94回アカデミー賞。本命がはっきり見える部門もあるが、今年最も授賞の行方が読めないのは主演女優賞だろう。候補になった5人が主演する作品は、どれも作品賞候補になっていないのだ。
・女性、非白人の台頭 多様性推し進めた成果が!/いまさら聞けないアカデミー賞
過去に主演賞、助演賞で受賞やノミネート経験のある4人に加えて、今回が初ノミネートとなったクリステン・スチュワートがダイアナ元皇太子妃を演じた『スペンサー ダイアナの決意』に至っては、オスカー候補になったのは主演女優賞のみだ。
前哨戦でも特に重視される映画俳優組合(SAG)賞を受賞し、クリティックス・チョイス・アワードでも受賞するなど、最有力と目されているのはジェシカ・チャステイン(『タミー・フェイの瞳』ディズニープラス他で配信中)だ。
1970〜80年代のアメリカで絶大な人気を誇ったTV伝道師夫妻の実話を、妻のタミー・フェイを主人公に描いた同作で、チャステインは厚化粧とド派手な出立ちで知られた女性の知られざる真実を熱演した。
アカデミー賞の投票は22日(現地時間)に締め切られたが、チャステインは投票開始日の17日(現地時間)、今年のアカデミー賞授賞式のTV生中継でメイクアップ&ヘアスタイリング部門の授賞をカットする決定への抗議として、レッドカーペットを歩かない意向を示した。この行動は、会員の多くを占める撮影現場のスタッフたちから支持されそうだ。
「私にとって最も重要なのは、私たちの業界で働く素晴らしい職人たちを称えることです」と言うチャステインは『ヘルプ〜心がつなぐストーリー〜』(11)で助演女優賞、『ゼロ・ダーク・シティ』(12)で主演女優賞にノミネートされている。3度めの今回、ついに受賞となるだろうか。
女性からの共感が期待されるオリヴィア・コールマン
『ロスト・ドーター』(Netflixで配信中)のオリヴィア・コールマンは『女王陛下のお気に入り』(18)で主演女優賞を受賞し、昨年『ファーザー』(20)で助演女優賞にノミネートされた。
5人の候補の中で、彼女はペネロペ・クルスと共に実在ではない架空の人物を演じている。近づけるべきモデルにとらわれる必要のない自由なキャラクター作りで、今まであまり描かれることのなかった“母親”という立場にとらわれ続ける女性の心情を、さりげなくきめ細やかに演じている。女性会員の共感を大いに誘うものだが、オスカー好みのドラマティックさには欠けるかもしれない。
夫婦でノミネートのペネロペ・クルス
ペネロペ・クルスは、ペドロ・アルモドバル監督の『Paralle Mothers(原題)』でノミネートされた。英語作品ではなく、母国のスペイン映画でのノミネートだ。アルモドバル監督とは、主演女優賞にノミネートされた『ボルベール〈帰郷〉』(06)を始め、『オール・アバウト・マイ・マザー』『ペイン・アンド・グローリー』など、本作を含めて8本の作品で仕事をしている。同日に出産を迎えた2人の母親の物語で、クルスはその1人を演じてヴェネチア国際映画祭で最優秀女優賞に当たるボルピ杯を受賞した。前哨戦では、全米映画批評家協会とロサンゼルス映画批評家協会という米国の3大映画批評家協会の2つで主演女優賞に輝いている。
オスカーでは、夫のハビエル・バルデムと共演した『それでも恋するバルセロナ』(08)で助演女優賞し、『ボルベール〈帰郷〉』(06)で主演女優賞、ミュージカル映画『NINE』で助演女優賞にノミネートされた。
今回はバルデムも『愛すべき夫妻の秘密』で主演男優賞候補になり、夫婦ダブル・ノミネートも話題になっている。
SNS批判されるも公開後に一変したニコール・キッドマン評価
ニコール・キッドマンは、アメリカの伝説的コメディ女優のルシル・ボールを演じた『親愛なる夫妻の秘密』(Amazon Prime Videoで配信中)」で、2010年以来の主演女優賞候補入りを果たした。
本作の出演はケイト・ブランシェットの降板を受けての代役で、キッドマン出演のニュースが出た直後から作品完成まではSNSなどで批判的な論調が多かったが、映画が公開されると、評価は一変。前哨戦ではゴールデン・グローブ賞のドラマ部門で受賞している。
『めぐり会う時間たち』(02)で主演女優賞を受賞し、『ムーラン・ルージュ』(01)、『ラビット・ホール』(10)で主演女優、『ライオン』(16)では助演女優賞候補となり、今回が5度目のノミネーションとなる。
イギリスのダイアナ元皇太子妃が離婚を決意した1991年のクリスマス休暇を描く『スペンサー ダイアナの決意』に主演したクリステン・スチュワートは、オスカー候補となったのは今回が初めて。前哨戦では全米各地域の批評家協会賞を多数受賞し、一時は最有力視されていたが、SAG賞ではまさかのノミネーション落選してしまった。それでも、従来にはないアプローチで王室を描いた意欲作での演技はアカデミー会員の支持を得たようだ。オスカー史上、SAG賞にノミネートされずに主演女優賞を受賞した例はないが、果たしてその歴史を塗りかえるかどうか、注目したい。
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