ヘンリー・カヴィル
新スーパーマン映画『マン・オブ・スティール』は、滅び行く惑星クリプトンで生を受けた赤ん坊が両親の手でカプセルにのせられて地球へと送り出されるシーンから始まる。生後まもない我が子に未来を託して、永遠の別れを決意する両親の大きな悲しみと覚悟に、早くも涙、涙である。すっかり赤ん坊の保護者になった気分で映画を見守ったので、地球で心優しい両親に拾われ、クラークと名付けられて立派に育てられたことに安堵し、超人的な能力がバレそうになればハラハラし、という具合で、結末を分かってはいても、ひとりの子どもが己の宿命と向き合い強く成長していく、という普遍的なストーリーを存分に楽しめた。
しかも、正義のヒーロー役のお約束通り、イケメン&マッチョな主人公なのだ。新スーパーマン役には、英国人俳優のヘンリー・カヴィル、30歳。ウディ・アレン監督の『人生万歳!』に出ていたハンサム君であり、『インモータルズ −神々の戦い−』で筋肉美も披露済みだが、今まで世界的な知名度は低く色がついていなかった分、仕切り直しのスーパーマン映画の主人公にはぴったりだったのだろう。
新スーパーマンは彫刻のような顔立ちと鍛え抜かれたごっつい体でありながら、自分の並外れた能力をどう生かしていくか悩み葛藤しながら成長していく過程が描かれているので、ヒーローでありながらもどこか幼く頼りなくも見えた。クラークに思いを寄せるヒロインの記者ロイス・レイン役はエイミー・アダムスが演じていたが、レインは利発で自立している女性なので、力ではクラークがレインを守っていても精神的な支えとなっているのはレインのほう。そんな関係もまた現代的だといえる。
そして、生みの父役をラッセル・クロウ、育ての父役をケビン・コスナー、さらに育ての母役にダイアン・レインと主役級の役者が脇を固め、それぞれの立場で親としての愛情に満ちた演技を見せながら、しっかりと新ヒーローをサポート。演技の凄味でいえば、ナンバー1だったのは適役のマイケル・シャノンだが、物語上でも芝居上でも、演じているヘンリー自身が、脇を固める素晴らしい役者や監督に育てられているような温かさが伝わってきた。
先日、本作のPRのために来日したヘンリー・カヴィルは、映画のなかのような幼い雰囲気ではなく、年齢相応の凛々しく真面目そうな男性だった。白いシャツにダークブルーのパンツ、黒いソックスとレザーシューズという英国人っぽいファッションで、「いつか富士山に登ってみたい。僕は自然とエクササイズが好きだから、その両方を楽しめそう」と爽やかにコメント。お堅い雰囲気のヘンリーとは対照的にリラックスした笑みがこぼれていたザック・スナイダー監督(これまたイケメン)がコメントする際に、ザックのほうに顔を向けて真剣に聞き入っていた様子が好印象だった。続編も決定しているから当面は正統派イメージでいくのだろうけれど、どんな“オヤジ”に変貌していくのか楽しみだ。(文:秋山恵子/ライター)
『マン・オブ・スティール』は8月30日より全国公開中。
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