森山未來、自分の唾液を混ぜた酒を振る舞う“首狩り族”の生き様に思う…「地球と共に生きる」とは?
ドキュメンタリー映画『カナルタ 螺旋状の夢』凱旋上映
太田光海監督が単身アマゾンの熱帯雨林に乗り込み、先住民のもとで1年住み込みして捉えたドキュメンタリー映画『カナルタ 螺旋状の夢』。昨年21年10月に前項27の映画館で上映され大反響を巻き起こし、このたび4月23日より東京・下高井戸シネマで凱旋上映される。
・“首狩り族”の元でたったひとり住み込みした日本人! アマゾン先住民の人生観を捉えたドキュメンタリー
太田は、1989年東京都生まれの映像作家・文化人類学者で、神戶大学国際文化学部、パリ社会科学高等研究院(EHESS)人類学修士課程を経て、マンチェスター大学グラナダ映像人類学センターにて博士号を取得。パリ時代はモロッコやパリ郊外で人類学的調査を行いながら、共同通信パリ支局でカメラマン兼記者として活動した。
マンチェスター大学では文化人類学とドキュメンタリー映画を掛け合わせた先端手法を学び、アマゾン熱帯雨林での1年間の調査と滞在撮影を経て、本作品を初監督した。
また、21年には、写真と映像インスタレーションを用いた個展「Wakan/Soul Is Film」(The 5th Floor)を開催、「ATAMI ART GRANT」に参加するなど、映像以外でも広く表現活動を担う。
コムアイ、菌や霊にテリトリーを主張する原住民の姿に感嘆
本作品について著名人が次のようにコメントしている。
俳優・ダンサーの森山未來は、本作品で登場するアマゾン熱帯雨林にあるシュアール族を目の当たりにして自問する。
「執拗に殺菌された僕らの手はどのような微生物も受け入れず、体内から生まれる微生物を誰かに届けることもない。方や、芋に唾液を混ぜ合わせて酒を作り、その酒を振る舞って家を建て、吐き出された吐瀉物は土に還る。そうやって全身を使って大地と交感し、愚直な循環を続けるアマゾンに住む人々。どちらが地球と共に生きていると言えるのだろう」
アーティストのコムアイは、本作品で印象的な場面を思い返しながら、次のように語った。
「シュアール族のセバスティアンがアヤワスカを飲んでビジョンを見ているとき、宙に向かってあちこちに息をフーーッと吹いた。彼は空の中に浮かんでいて、雲を蹴散らしているようだった。恐怖に負けそうな時も吹いた。ここにいる、生きている、と。自分を食わんとする動植物や菌や霊たちに対して、テリトリーを主張するかのようだった。口噛み酒のチチャを作る時も、妻のパストーラはよく噛んだユカをビューーッと鍋に吹いた。吐くのではない、吹くのだ。吐くときは、自分の身体から要らないものを排出するときだ。吹くときは、命の息吹が身体から躍り出る。美味しいチチャになるのだ! 映画を見終わって、東京の電車の中、ひとびとがマスクのなかでつくため息を感じる。切ないながら神秘的だ」
思想家・人類学者の中沢新一は、本作品が果たした役割について感慨深く語る。
「カメラを持った人間=人類学者が植物の内面空間に入り込んでいく。そこに充満する樹液によって、森に暮らすあらゆる生き物が生かされ、癒され、超越領域への扉を開かれている。カメラは植物の外部にあるのに、それがとらえる映像はたしかに植物の内面空間へ潜り込んでいるように私たちは感覚するのだ。映像による人類学は、この映画によってまた一歩、自然の奥に入り込むことに成功した」
エクアドル南部アマゾン熱帯雨林の秘境に暮らすシュアール族の実態
本作品は、エクアドル南部アマゾン熱帯雨林にあるシュアール族の集落、ケンクイム村に暮らすセバスティアンとパ ストーラ夫妻を捉えたドキュメンタリー。
かつて首狩り族として恐れられたシュアール族は、スペインによる植⺠地化後も武力征服されたことがない⺠族として知られている。口噛み酒を飲み交わしながら日々森に分け入り生活の糧を得る一方で、アヤワスカを始めとする覚醒植物がもたらす「ヴィジョン」や自ら発見した薬草によって、柔軟に世界を把握していく。変化し続ける森との関係の中で、自己の存在を新たに紡ぎだしながら。しかし、ある日彼らに試練が訪れ、物語は予想を越えて旋回していく──。
『カナルタ 螺旋状の夢』は、4月23日より東京・下高井戸シネマで上映される。
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