『アラビアのロレンス』などで3度のアカデミー賞作曲賞受賞に輝く84歳の巨匠が来日!
11月21〜24日に開催される大阪ヨーロッパ映画祭の名誉委員長をつとめる作曲家モーリス・ジャールが来日し、都内で記者会見を行った。
現在84歳のジャールは、『アラビアのロレンス』(62)『ドクトル・ジバゴ』(65)『インドヘの道』(84)で3度ものアカデミー賞作曲賞受賞に輝く巨匠中の巨匠。会見では、名作『アラビアのロレンス』や、故デヴィッド・リーン監督にまつわる印象深いエピソードをいくつも披露してくれた。
『アラビア〜』の製作時、ラフカットを月曜日から金曜日まで延々と見せられた後、プロデューサーのサム・スピーゲルから「これをデヴィッド・リーン監督が完成させるから、2時間くらいの音楽をつけてほしい」と“気軽に”言われたというジャール。締め切りはなんと6週間後!
「12月2日に英国女王を招いてロイヤル・プレミア試写を開くことに決まっているから、この期限は絶対変えられないということでした。実は私は眠ることが大好きなんです。でも、この仕事は昼も夜もとりかからないとできないだろうと分かったので、きちんとスケジュールをたててやることにしました。5時間作曲して20分寝て、5時間作曲して20分寝て……。これをやり続けました。6週間後、かわいそうな私は(笑)疲労困憊してクラクラでした。けれど、曲は全部作り上げたのです!」
その苦労は、ロイヤル・プレミアで報われたという。
「映画の終盤、観客が、音楽で盛り上げた部分で拍手をしてくれたんです。私が伝えたいと思ったところを観客がキチンと受け取ってくれたんです。あの時の思いは忘れられません。苦労して働いた甲斐がありました」
ルキノ・ヴィスコンティ(『地獄に堕ちた勇者ども』69)、アルフレッド・ヒッチコック(『トパーズ』69)、ウィリアム・ワイラー(『コレクター』65)、フォルカー・シュレンドルフ(『ブリキの太鼓』79)、ピーター・ウィアー(『刑事ジョン・ブック/目撃者』85)など、名だたる名監督と数多くの傑作を作り上げてきたジャール。だが、『アラビアのロレンス』で組んだ、イギリスが誇る巨匠デヴィッド・リーン監督への思いは格別のようだ。
「デヴィッド・リーンという監督がいなかったら、こうして私がみなさんとお会いすることもなかったでしょう。彼と出会ったことで、こうして仕事を続けてこられたのだと思います。正直なところ、彼はうるさいので仕事はキツかったですね(笑)。『ドクトル・ジバゴ』のテーマ曲も何曲も作らされました。一番最初に持っていったら『ちょっと悲しいからイヤだ』。次は『早すぎる』。その次には『ちょっと遅いんじゃない?』……。一番最後に持っていった曲にOKを出してくれたのですが、『モーリス、これだよ、僕が待っていたのは。これだよ!』と言ってくれました。その時、私はとても嬉しくて、頑張ってやって良かったと思いました。彼との仕事があったからこそ今の私があるわけなので、そのことを忘れないでいたいと思います。ありがとう、デヴィッド!」
一番最初は222分で上映された『アラビアのロレンス』だが、映画館で上映する時の効率を良くするために次第に短くカットされていった。また、途中、2巻目のプリントが裏焼きされてしまい、時計の数字が反転してしまうなど、真の素晴らしさを堪能できない状況に陥っていた。これを、完成当初の形に復元し、映像や音楽も補正しよみがえらせた完全版/ニュー・プリントバージョンが、大阪ヨーロッパ映画祭では上映される。ジャール曰く「まるで先週、完成したばかりのようになっている」という。また、このバージョンは、12月に新宿テアトルタイムズスクエアでも公開されることが決定している。
(写真:来日会見したモーリス・ジャール)
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