いま世界が見つめ直すべきものとは? 物語に引き込まれる『ファンタビ』新作
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デップの後を継いだマッツ・ミケルセンが優雅な邪悪さで魅了
【週末シネマ】昨年20周年を迎えた『ハリー・ポッター』シリーズのスピンオフであるシリーズの第3作『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』が公開された。パンデミックによる撮影延期、グリンデルバルド役のジョニー・デップの降板など、困難に見舞われながら完成した本作では、魔法動物学者のニュート・スキャマンダーがホグワーツ魔法魔術学校のアルバス・ダンブルドアに呼ばれ、魔法使いやマグル(人間)も加わった仲間たちとともに、魔法界のみならず人間界をも支配しようと暗躍する黒い魔法使い、ゲラート・グリンデルバルドの企みを阻止しようと立ち向かう。
・マッツ・ミケルセン登場の『ファンタビ』新作、頂上決戦の“ゲームチェンジャー”は誰!?
主人公はもちろん、エディ・レッドメインが演じる心優しきシャイな学者のニュートだが、今回はジュード・ロウ演じるダンブルドアが実質的な主役と言っていいほどの活躍を見せる。デップの後を受けてマッツ・ミケルセンが演じるグリンデルバルドとの愛憎の長い歴史、そしてダンブルドア一族の秘密が重要な位置を占める物語になっている。デップが作り出した、逆立つ髪にオッドアイとは違うグリンデルバルドの新しい風貌に最初こそ戸惑うが、ミケルセンは代表作『ハンニバル』などでも見せてきた優雅な邪悪さで、黒い魔法使いを魅力的に演じる。
前作よりも物語そのものを楽しめる脚本
ホグワーツやホグズミード村、不死鳥など、『ハリー・ポッター』でお馴染みのものが登場し、2つのシリーズが1つの大きな物語としてさらに深まった印象だ。アルバスと弟アバーフォースが経験した悲劇や、エズラ・ミラーが演じるクリーデンスとダンブルドア家の関係、そして若き日に同じゴールを目指しながらも決別したダンブルドアとグリンデルバルドの関係に踏み込む本作は、CG多用の派手な映像の印象が強かった前作に比べて、物語を堪能できる。脚本が原作者のJ・K・ローリング1人ではなく、『ハリー・ポッター』シリーズを手がけたスティーヴ・クローヴスも加わっていることが功を奏したようだ。監督は前2作から続いてデヴィッド・イェーツが務める。
物語に込められた社会への警鐘、ファンタジーが苦手な人にもおすすめ
シャイでおっちょこちょいなニュートや可愛い魔法動物、気のいいマグル(人間)のジェイコブも交えたダンブルドア率いるチームの団結力など、ファンタジー要素も微笑ましさも満載なのだが、物語に込められたメッセージは社会への警鐘も含めて、いま世界が見つめ直すべきものを伝える示唆に満ちたものだ。
1930年代のニューヨークに始まり、舞台を世界に広げていくなかでナチスが台頭するドイツのベルリンも登場する。グリンデルバルドの企みと当時の現実で起きていたファシズムの台頭との類似性を持たせた描き方は、実はファンタジー作品があまり得意ではない筆者にとっては物語に入り込むありがたい助けになった。
互いを攻撃し合わないための「血の誓い」を立てたはずのダンブルドアとグリンデルバルドの対決、登場キャラクターたちそれぞれの愛、1つの目的のために力を合わせるチームワークなど、1つ1つのドラマが丁寧に描かれる。本作は全5作を予定するシリーズの折り返しとなる。さらに複雑になっていくこの先の展開も楽しみだ。(文:冨永由紀/映画ライター)
『ファンタスティック・ビーストとダンブルドアの秘密』は、2022年4月8日より公開中。
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