アメリカ演劇界の重鎮ロバート・アラン・アッカーマンが監督し、ハリウッド女優ブリタニー・マーフィが主演した『ラーメンガール』(1月17日より公開)。恋人と暮らすために東京にやってきたものの、その彼は長期出張で大阪へ。見知らぬ町にたった1人で取り残され途方に暮れる若いアメリカ人女性が、1杯のラーメンによって元気を取り戻し、なんとそのラーメン屋に無理矢理弟子入り! 熱血漫画も顔負けの厳しい修行を経て、ラーメン・シェフとして、そして人間として成長していく姿を描き出す。この笑って泣ける人情ドラマを手がけたアッカーマン監督が来日。映画について、そして日本文化について話を聞いた。
“スシ”の知名度はもはや世界的。マンハッタンには「ここって日本?」と思うような居酒屋もあり、“日本の食”は世界で大人気。映画のタイトルになったくらいだから、ラーメンだって、アメリカではすっかりメジャーなのかと思いきや、監督は「全然!」と涼しい顔。「カップヌードルは大学生の常備食だけど、ニューヨークを別にすれば、普通のアメリカ人にとっては『ラーメンって何?』という感じだと思いますよ」。本作の脚本が出来上がったときも、アメリカ人スタッフは表紙の“RAMEN”が読めず、“レーメン”などと発音していたのだとか。「私自身はメチャメチャたくさん食べていて、困っちゃうくらい好きなんですけどね」と監督。一番美味しいラーメンの食べ方について、「夜通し仕事をして、寝る前に“ちょっと一杯”という感じで、困ってしまうくらい汚〜い店に寄って、ズズっとすするのがいいですね〜」と、ツウな意見を満面の笑みで語っていた。
この作品が楽しいコメディであるのはもちろんだが、監督は、ある政治的なメッセージも込めたという。「アメリカ人は、自分たちが一番賢いと思いがち。イラク戦争でもそうなのですが、アメリカ人は自分たちの文化を他国に押しつけ、自分は学ぶことをしない。それはよくないということを、映画を通して伝えたかったんです」。
舞台人であり、リチャード・ギアやショーン・ペンらそうそうたる俳優の舞台を演出、数々の演劇賞を受賞するなど、演劇の分野で高い評価を得るアッカーマン監督は、日本でも数多くの舞台を手がけている。そんな彼が、日本で気になることがあるという。「私はアメリカでもヨーロッパでも仕事をしてきましたが、若い有能な人々にとって、日本はとても辛く厳しい国だと感じています。古くて頑迷な気質があり、若い人たちにはなかなかチャンスが与えられない。変わったことをやろうとする若者の意見を排除するようなところもある。日本ではまず、オーディションがほとんどないですよね」。だから、日本で仕事をするときは、なるべく若者たちと仕事をするようにしているのだという。そして、そんな演劇界で感じたことも、『ラーメンガール』に投影したという。クライマックスで、アビーはある人物に拒否されるが、それは新しい風を排除する日本の姿なのかもしれない。
『ラーメンガール』は、1月17日よりテアトル新宿にて公開される。
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