常識知らずでアナーキーな中年パンクバンド・メンバーとレコード会社のダメOLが、暴走しまくりの全国ツアーを巡る様子を描いた『少年メリケンサック』。監督は、人気脚本家の宮藤官九郎。しりあがり寿の漫画を映画化した初監督作『真夜中の弥次さん喜多さん』(05)に続く第2作だ。製作・配給は東映。お題がパンクなだけに、アブないネタが満載で、宮藤は知り合いの人々から、こんな企画にOKするなんて、「スゴいね、東映さん」と言われたという。そんなパンクな意欲作について、宮藤監督に話を聞いた。
主演・宮崎あおいと、凶暴で酒癖の悪いベーシストを演じた佐藤浩市のハジけっぷりに大笑いさせられるが、今までのイメージを覆すようなキャスティングの妙にうなってしまう。
「ハマり過ぎるキャスティングに興味がないんです。どこかミスマッチな部分のあるキャスティングの方が盛り上がります。主人公かんなについては特に、パンクというイメージから最も多い人がいいと思っていました」
また、清純派・宮崎のコメディエンヌとしての才能を見事に開花させた作品でもあるが、彼女の演技力には宮藤監督も驚かされたようだ。
「あおいちゃんの振り切れ方を見て、こんな女優さん、見たことないと思いました。演じることに構えも無理もなくて、日常の延長でカメラの前に立っていられる。演技についても、一言でスッと変えてくれる。やっぱりプロだな、と。実は女性を演出するのが得意じゃないというか、今までやったことがなくて、今回がほとんど初めてだったんです。でも、互いに説明などせず、脚本のセリフを言ってもらって、その言い回しや動きだけで役を作っていってくれました。それがとても僕に合っていたし、やりやすかったですね」
宮崎がNHKの大河ドラマ『篤姫』出演中だった昨年春に撮影されたこの作品。「宮藤作品なら」という返事で奇跡的に出演が実現したというが、『篤姫』とは180度違う役柄を、楽しそうに生き生きと演じている。そんな彼女の新境地を引き出した宮藤監督の才能には、脱帽するほかない。
『少年メリケンサック』は、2月14日より全国東映系にて公開される。
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※宮崎あおいの「崎」は、正しくは旧字ですが、機種により正しく表示されない場合があるので、「崎」で代用しています。
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